ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

モザイクロール　-バーチャル少女さんリクエスト- ページ49

「もう、だめだよ」
「…っ！何で！」
「だって、もう、レンのこと、好きなのか分からないもん」
「……」

苦しそうに、顔を歪ませるレン。
まるで、ナイフか何かがおなかに刺さったような表情だった。

その傷口から流れ出るのは、愛か欲か。

「…それでも、俺は、Aが好きだ」
「でも、私は」
「愛したっていいじゃないか」

愛す？
私を縛り、誰にも触れさせないようにすることが？

それが、愛？

「愛されるのは、幸せだよ。愛すのも、幸せ。だけどね、君の愛は、重いよ」
「何だよ、それ…！Aだって、俺を愛したんじゃないのか？」
「…愛したよ。愛したけど…」

君の重い愛に、押し潰されてしまった。

そして、そんな愛の終わりに残るのは、ただの飽きだった。

「だから、もうだめだよ…」
「そんな…」
「さよなら」

レンから感じられるのは、私を誰にも渡したくないという独占欲。
その愛には、思いやりなんてものはなくて、キスもデートもその先も、形だけのようなものだった。

ただただ、したい、一緒にいたい、と言われるから。
最初はそれが嬉しくて、しがみついていただけだった。

けれど、ただしがみついているのにも力は必要で、私は、それに疲れた。
だんだん辛くなって、もがいて。

それが愛だなんて、言えなくなっていって。

「…A、愛してる」
「…うん」
「愛してるんだ。好きなんだ」
「…うん」
「Aは、俺のことが嫌い？」
「…――うん」
「……」

うん、と、言った。
俯きがちに、頷いた。

レンの表情は、見えなかった。

「…そっか」

けれど声は、レンじゃないみたいに、かすれていた。

「ごめんね」

ここで私は、初めて謝った。
レンが私を縛っていたのが悪いのだから、謝るなんて、思っていなかった。
けれど、自然と、口から出たのだった。

「嫌いじゃないから。でも、重いんだ。辛いんだよ」
「…うん」

レンの声は、かすれてはいなかった。
ただ、元気はなかった。

「…これも、運命かな。Aを縛っていたから、バチが当たったのかな」

自嘲気味に、レンが笑うのが聞こえた。

「でも、それでも、好きなんだ。
Aが俺のことを嫌いでも、俺の一方的な愛でも。それでもいいから…」

だから、と、呟く。

「好きで、いさせて」
「…君に愛されることも、運命、なのかもね」

今日も、とある愛世が、消えていく。


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