六兆年と一夜物語 -雷世リクエスト- ページ32
「さっさと運びなよ、グズ!」
仕事が遅くなってしまうのは体が痛いからなのに、更に蹴られる。
暴力がなければ、もっと仕事を素早くこなせるのになぁ…と、夕焼け空を見ながら思った。
「それが終わったらさっさと寝なよ!」
言われなくても、そうするつもりだった。
本当はこんな扱いは辛いとか悲しいとか思うんだろうけど、僕は産まれ落とされた瞬間からのその罰に慣れてしまっていて、ただただ、人間の体は意外と丈夫にできているんだなとか、そういうことしか考えなくなっていた。
人間って本当、生命力が強いよね。
毎日殴られても蹴られても、馬小屋の汚い水を飲んで他の人の食べ残しだけを食べて生活していても、生きていられるんだもの。
「……」
今日も暴力と蔑みの目だけを与えられて、一日が終わるはずだった。
しかしそこに、君が現れたんだ。
「君の名前は?」
そう訊かれたけれど、僕には答えるための舌が無かったから、ただ、首を横に振った。
舌は喋るためのものだから、僕みたいな忌み子には必要ないと、まだ産まれたばかりの頃に奪われた。
「ねぇ、一緒に帰ろうよ」
どこに?
「ほら、雨もやんだよ」
少女はそう言って、僕の手を引いた。
しかし僕は、すぐにその手を振り払った。
「…嫌なの?」
本当は行きたかった。
けれど、この子と僕が一緒にいるところを見られたら、この子も僕のように扱われてしまう。
そう思ったから、頷いた。
「だめ。君は、私の言うことを聞かなきゃいけないんだよ」
それは僕が彼女の支配下にあるという意味のはずなのに、何故だか、優しく温かい響きに感じられた。
「早く来て」
僕は少女に手を引かれて馬小屋を出た。
少女と僕は、ずっと歩き続けた。
集落を出て、その先は、どこだか分からなかったけれど、真っ直ぐ歩いた。
どこに向かっているのか聞きたかったけれど、それは僕には不可能なことだった。
「多分、幸せにはなれないと思うけど」
別に、今までの暮らしが当たり前だったから、不幸だなんて思わなかった。
だって、幸せがどんな生活なのか、体験したことなかったし。
「それでも、あいつらがいない世界に行きたいから」
あいつらっていうのは、あの、僕に暴力をふるうあいつらのことだろうか。
もしそうなら、僕もその意見には大賛成だと思った。
だから僕は、彼女に手を引かれ、夕焼けの中をただただ歩いていくのだった。
END
私の時間 -∞愛信五∞さんリクエスト-→←ローリンガール -真未リクエスト-
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あか(プロフ) - 阿修羅 時雨 恋輝叶さん>まっちゃアイスさん>こちらの小説はもう完結しています!なので、続編の方に改めてコメントお願いいたします;; (2012年7月23日 19時) (レス) id: 537650310a (このIDを非表示/違反報告)
あか(プロフ) - 雷世>まじかよ・・・1位とか私100年かかっても無理だわww バーチャル少女さん>神じゃないですよ紙ですよww 続編、今のところ作る予定ですー! (2012年6月30日 20時) (レス) id: 537650310a (このIDを非表示/違反報告)
雷世(プロフ) - 学力テストは10位以上でおk何だけど期末は1位じゃないとというね・・・(´・ω・`)つか今度から全教科85点以上取らないと買ってもらえないという仕打ち・・・ (2012年6月29日 21時) (レス) id: b8f8948618 (このIDを非表示/違反報告)
あか(プロフ) - 雷世>あれ、10位はだめなんだっけ!?てかうちの学校、学年順位とかまだ出てないんだが・・・成績出たら出るかなぁ (2012年6月29日 20時) (レス) id: 537650310a (このIDを非表示/違反報告)
雷世(プロフ) - どっちもあったよーな・・・← あ、学年順位10位でゲーム買い損ねた\(^o^)/ (2012年6月29日 19時) (レス) id: b8f8948618 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あか | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=akanekazemaru
作成日時:2012年2月20日 20時