ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

ローリンガール　-真未リクエスト- ページ31

幼稚園の頃から、ずっと同じ夢を持っていた。

それは、世界的に有名なピアニストになること。
３歳からピアノを習い始めて、今年で１２年目。

そろそろ周りの人は「将来の夢なんてない」とか、「人並みに暮らせればいいよね」とか、そんな雰囲気になっていた。
それでも私はいつまでも、夢ばかり追いかけていた。

「そうね…今回は、ミクさんに頼みましょうか」
「はいっ！」
「Aさんは、また今度お願いするわ」
「……はい」

何度も何度も、コンクールに出たり、音楽会のピアノ演奏に立候補したりしたけれど、どれも素晴らしいと言えるような結果は出せなかった。

「…大丈夫」

失敗しても失敗しても、また回る。
そうやって、ここが坂道だと信じて、回ってきた。

その先が、夢に繋がっていると信じて。

「ねぇ…そろそろ、将来のことも考えてよ？高校受験なんだから」
「考えてるよ。音楽に力を入れてる高校に入りたい」

母親は、少し表情を曇らせた。
そして、ゆっくりと、口を開く。

「……あのね、A。こんなこと、本当は言いたくないんだけど……」

その、言葉を選びながら慎重に喋る様子で、何を言われるのか予想がついた。

「分かってる。でも、お願い…もう少し、頑張らせて。せめて、高校だけは、音楽系に入りたいの……」
「……」

母親は、不満そうだった。

そりゃあそうだ。
だって娘が、なれもしないだろうと思われるピアニストになるために、無駄な努力をしているんだから。

でも、どうしても、頑張りたい。
まだまだ、転がり続けたい。
「もういいよ」と、「諦めなよ」と、何度言われても。

いつか、息を止める(やめる)時まで。


「私は今日も、転がります」


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