ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

天ノ弱　-佑さんリクエスト- ページ28

「Aさ……俺のこと、嫌いなの？」

唐突すぎて、答えに困った。
そして、思わず出てしまった言葉は。

「別に」

そんな言葉だった。

本当は、大好きで大好きで、両手に持ったって零れてしまいそうなくらいなのに。
どうして私は、反対の言葉しか言えないんだろう？

どうしてこんなに、天邪鬼なんだろう？

「何だよそれ…嫌いなら嫌いって言えよ！
そしたら俺だって、変な期待持たなくて済んだのに…」
「期待なんて…私なんかにされたって……」
「違うよ…俺が告白したときに、嫌だったら嫌って、断ってくれれば良かったんだ」

前から好きだったレンからの告白。
嬉しくて嬉しくて、その日の夜は眠れないほどだった。

だから嫌なんてことはなくて、寧ろ断るなんて端から考えてなかったのに。

「断ってくれれば、俺だって、Aも俺のことを好きだったんだなんて、期待しなくて済んだのに・・・！」

違う！違う！
それは期待なんかじゃなくて、本当のことで…！

「…もういいよ、無理しなくて。ごめんな、今まで無理してつき合わせて」
「…え、あ……」
「……じゃあな」
「、待っ…！」

て、とは、言えなかった。

スタスタと早足で去って行くレン。
それを追いかけることは、弱虫の私にはできなかった。

追いかけなきゃ、だめなのに…
このままじゃ、誤解されたままなのに…

どんどん進んでいくレン。
それを追いかけられない弱虫な私。

二人の差は、どんどん開くばかりだった。

両手に持ったって零れそうなほどの愛をもらったのに。
そんなに幸せをもらったのに、まだその気持ちを、素直に言葉にできないの？

「…っレンっ！！」

待ってよ。
ねぇ、待つくらいなら、いいでしょう？

「私、レンのこと好きだから。」
「……」
「でも私、弱虫で、天邪鬼だから・・・」

だから。

「もっと、強くなれるまで、待ってて、くれませんか」

だって、君がいなくなったら、この愛を譲る宛がないよ。
そんなことは、嫌だ。
だから。

「…A」

レンが、私に向かって手を伸ばした。
少し身を強張らせてしまう、弱虫な私。

「弱虫じゃないじゃん。今までは何も言ってくれなかったけど、今言ってくれたから。……安心した」

さらりと、私の頬を撫でる愛しい手。

「やっぱり、別れるなんて無理そうだ」

振り返った君と止まった私。
縮まった距離は、とても、心地良かった。


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