ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

ピエロ　-１- ページ24

『さて、次は玉乗りピエロのパフォーマンスです！』

そんな声が、マイクを通して会場に響く。
それを聞いて、僕は勢いよくステージ上に飛び出した。

真ん丸の、お月様みたいな大きなボール。
その上で上手にバランスを取ったままポーズを決める僕に、皆が拍手を送る。

その時だった。
客席の人達は皆楽しそうに笑っているのに、一人だけ浮かない顔をしている女の子を見つけたのは。

――笑わせて、あげなくちゃ！

「わぁっ！！」

自然に、だけれど声はわざとらしく大げさに。
僕は、ボールの上から転げ落ちた。
そうすれば客席からは、どっと笑い声が沸き起こる。

ほら、あの女の子だってきっと――…

「…えっ？」

女の子は、先程よりも更に顔を歪ませ、涙を流していた。

「……なんで……？」
『――はい、玉乗りピエロでしたー！』
「あっ……」

団長のその声を聞いて、慌てて立ち上がり、ステージ袖にはけた。
最後まであの子は泣いていて、僕は彼女を笑顔にすることができなかった。

そのことが、悔しくて悲しくて。
けれどそんな気持ちを顔には出さずに、僕は出番が終わったあと、次回のサーカスのチラシ配りをしていた。

――その時、見つけたんだ。
あの、女の子を。


つづく

ピエロ　-２-→←千本桜　-雷世リクエスト-

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