ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

東京テディベア ページ19

暗い中、かたかたと歯を鳴らして座っていた。
体育で何度もやらされた体育座り。
腕に抱くのは、私の代わりのテディベア。

「…父さん母さん、今までごめん」

ぽつぽつと、昨日の夜書きなぐった遺書を読む。
人は誰一人いなかったけれど、テディベアがいるから。
この子は私の遺書を聞いてくれて、続けてくれるから。

「迷惑かけて本当にごめんなさい。でも、大好きでした」

本当は大嫌いだったけど、続きでは、好きでいて欲しい。
そんな思いを込めて、最後の嘘を吐いた。

「兄さん、姉さん。冴えない妹でごめんなさい。今までありがとう」

兄さんも姉さんも私のことは嫌いだっただろうし、ありがとうと伝えなければならないようなことをしてもらった覚えはなかったけれど、それでも、少し見栄を張った。
そうして良い風に型紙を作っておけば、私のテディベアは素敵な私になる。

幸せな続きが見られるんだ。

「クラスの皆、優しくしてくれてありがとう。先生もお元気で。」

クラスには親しい友達なんていなかったし、先生なんて大嫌いだった。

あぁ・・・だんだん辛くなってきた。
早く私なんて終わらせて、続きを始めよう。

脳みそ以外はもういらない。

「それでは、皆さん。ありがとうございました」

読み終わった頃、もう私のカラダは解けてぼろぼろになっていた。
でも、これでいいんだ。

「それじゃあね」

私は抱いていたテディベアをそっと横に置いた。
それから、立ち上がる。

そして、そのまま、飛び降りて、自ら命火を裁つ。


「私の代わり、よろしくね」


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