ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

ワールドイズマイン　-みなみさんリクエスト- ページ18

「おはよう、レン」
「…おはよ」

そんな風に無愛想に挨拶を返すレン。

…ねぇ、気付いてる？
わたしの髪型が、いつもと違うって。

「…ねぇっ」
「ん？」

わたしは自身の右手を、とん、とレンの左手の甲にぶつけた。
それはもちろん、右手がお留守で寂しいという合図。
それなのにレンは、なんにも気付いてくれない。

「何か、気付かない？」
「…髪型、違うね」

そうよ！

でもね、わたしが聞かなきゃ気が付かないなんて…失格なの。
だってわたしは、レンにとって、世界で一番おひめさまなんだもの。
そういう扱いをしてもらわなくちゃ！

「それだけ？」
「靴、新しくしたでしょ」

そうやって、何でもないことのように答えて。
聞けば答えてくれるのに、どうして自分から言ってくれないの？
わたしはそれを待ってるのに！

「…合格。だけど、まだ足りないわ」
「なに？」

無口で無愛想な、わたしだけの王子様。
そんなレンが、少しだけ笑った。

まるで、わたしのわがままを楽しんでいるかのように。

「……ん！」
「…あぁ」

わたしは、自分の右手をぐっと突き出した。
それを見て、まるで今気付いた、とでもいうような表情をして、わたしの手を握るレン。

――絶対、さっき手の甲をぶつけた時から気付いていたはずなのに。

「ねぇ、キミはずるいよ」
「何が？」
「っ…そういうところ！」

何もかも気付いているのに、わざと「何が？」とか「うん？」とか。
わたしの気持ち、なんにもわかってないわ・・・

「もっと素直になりなさいよ！真っ直ぐわたしを見て！」
「Aこそ。ちゃんと、『手を繋いで』って言わないとわかんないよ」
「〜〜〜っ……」

ああもう、嘘ばっかり！
そんなこと、言わなくたってわかってるくせに！

わたしが下を向いて唇を軽く噛んだ、その時。
突然、ぐいっと力強く腕を引っ張られ、そのまま――抱きしめられた。

「きゃっ……」

そして抱き合うわたし達の前を、車が通過してゆく。

「あ……」
「…轢かれる。危ないよ」
「…ありがとう」

そう言ってレンの方を見れば、目が合った途端、そっぽを向かれる。

――こういう時だけは、かわいいんだから。

これだからわたし、こんなオトコから離れられないんだわ。
本当、ずるい…。

「…こっちの方が、危ないわよ」

それでも、わたしは。
キミだけの、世界で一番おひめさま。


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