219.恐怖 ページ9
掃除は案外簡単なものだった。
山積みにされていたダンボールを台車に乗せて、それを同じ階にある倉庫へ櫻井さんが運んでいる間に私は机の拭き掃除。
倉庫から空になった台車とともに櫻井さんが帰ってくるとまた二人でダンボールを台車に乗せて、それから私は拭き掃除、櫻井さんは運搬。
本当にただそれだけの繰り返しで掃除は一時間もしないうちに終了した。
「本当にお疲れ様。急に頼んじゃってごめんね？」
「全然大丈夫ですよ！」
「じゃあオレ、台車返してくるけどそのまま広報部戻っていいからね？」
「あー...いや、もう少しだけ机拭いてから戻ります」
「そっか。ありがとね」
「あまり遅くなりすぎないようにね！」って言葉を残して、櫻井さんは台車を返しにいった。
私はまた会議室に入って、机を吹き始める。
ガチャリ、と会議室の扉を開く音がした。
「櫻井さん？何か忘れ物でも......」
後ろを振り返った瞬間に、私の息はピタリと止まって、右手に持っていた布巾は床に落ちていた。
「なんで、ここに......」
会議室に入ってきたのは、櫻井さんでなくて。
「お疲れ様、Aちゃん」
楽しそうに笑っている、望月くんだった。
何にも後ろめたい事なんてない筈なのに、私の心臓はバクバクしていて一向に落ち着かない。
コトリ、と革靴の音を鳴らしながら少しずつ近付いてくる望月くん。
ただそれだけの事なのに、私は恐怖を感じている。
それって多分普通じゃない。
「も、望月くん...出張...」
「昨日の夜帰ってきたんだけど...あれ？連絡したのに見てない？」
「あ、あの...忙しくて携帯見れてなくて...」
「それは仕方ないね」
近付いてくる事をやめない望月くんから、気が付けば私は後退りをしていた。
「...どうして逃げてるの？」
そう言われた頃には、私の腰には机の縁が当たっていて。
これ以上は逃れられない事を察知した。
「に、逃げてる訳じゃ...」
「じゃあ何？」
「えっと...あの、どうしてうちの会社に居るのかなって、思って...」
目を泳がせながらその場で思いついた分かりやすい嘘をついた。
その嘘に望月くんは絶対気付いているけど、優しさなのか何なのか彼は気が付いていないようなフリをしている。
やっぱり私は、恐怖しか感じられない。
「暫くAちゃんの姿見てなかったから、元気かなって。お昼時だし、一緒にご飯でも食べようと思ってね？来たんだけど...」
彼の目の色が、冷たい色に変わったのが分かった。
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早咲(プロフ) - あさみさん» 長ったらしいお話にお付き合い頂き、本当にありがとうございました★私もシリアスな場面を書くときはハラハラしてました(笑)本当にありがとうございました！ (2018年3月25日 17時) (
レス) id: e21b3fe696 (このIDを非表示/違反報告)
あさみ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最初から読ませてもらってました。途中の試練でいつもハラハラしてましたが最後は幸せに戻れて嬉しい気持ちでいっぱいです。二宮さんの主人公ちゃんへの気持ちが大好きでした。 (2018年3月24日 21時) (レス) id: 5ffc9374f6 (このIDを非表示/違反報告)
早咲(プロフ) - keiさん» アドバラに登場する恋敵はみんな癖が強すぎましたね(笑)書いてる私も病んじゃいそうでした(^◇^;)二宮くんに関してはもう言うことなしですよね(笑)完結までお付き合い頂き、本当にありがとうございました★ (2018年3月24日 18時) (レス) id: e21b3fe696 (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - 完結おつかれさまでした(*^^*)華ちゃんにもなかなか手こずりましたけど、今回のもっちーは強敵でしたね。歪んだ愛情？って怖い！そんな中、和くんは見守ってくれてたんですね。よかった〜(T0T)さすが心に大皿をもってらっしゃる(笑)幸せなラストありがとうございます！ (2018年3月24日 8時) (レス) id: 6133f4f2c1 (このIDを非表示/違反報告)
早咲(プロフ) - ぐちこさん» 最後までドキドキハラハラが止まらないようなお話の展開で本当に申し訳なかったです(^◇^;)完結までお付き合い頂き、ありがとうございました★ (2018年3月23日 16時) (レス) id: e21b3fe696 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早咲
| 作成日時：2018年1月22日 18時
