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*


「…何で今更、もう放っておいて……」



消え入るような声で母親に訴えるAが
僕の方へ一歩後ずさった。それを見ると
母親は顔を歪めて僕を睨み上げる。




「Aをおかしくさせたのはアンタね。
…これだから親のいない人間は」

「っ、違う!!彼はそんなことしてない」



微かに胸が痛んだその言葉を、必死にAが否定する。
恐らく彼女が自分に反論するとは思わなかったのか
一瞬怯むもすぐにAの手を掴んだ。




「いい?明後日ママが知り合った警察の人のご子息と
お見合いをするの。こんな男よりもっと素敵な人と
貴方は結婚するんだから…ほら、行くわよ」


「……は?」

「ちょ、ちょっと待ってください」



強引にポアロを出て行こうとする母親に
そう声をかけると「しつこいわね、警察呼ぶわよ」と
一蹴りされてドアノブを引いた。







「ーーーーーーーい、嫌…」



彼女は抵抗出来ない。

恐らく子供の時に深く刻まれたトラウマが
まだ癒えていないのだろう。

手を引っ張られた彼女が助けを求めるように
俺をちらりと見て、やがて
伸ばしかけていた手を下ろした。


その仕草の意味は、





「……もう二度と、娘の前に現れないで」





バタンと閉ざされた薄いドアが
何重にもなった壁に感じられた。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「…安室さん。本当にいいの?」



一睡も出来なかった。その次の日もほとんど。

今日は不幸にも開店からのシフトが入っていて
濃く刻まれたクマを隠さずに
コナン君の言葉へ「ああ」と返す。




「……彼女から僕の手を離したんだ。それに、
見合いの相手は僕の上司に値する人間…
首を突っ込めばそれこそ首が飛ぶだろうな」

「安室さんって、そんなに諦めのいい人だっけ。
多分先生なら…結婚を受け入れると思うよ」




(僕だって、)




諦めたくなんてないさ。

世界中探したってきっと見つからない、
あんなに魅力的で素敵なパートナーは。

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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