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「いやぁ、ごめんね
知らない男の手当なんかさせちゃって」









ヘラリ、と軽快に笑った白銀の男は
私にそう言った









誰かにお礼を言われたのは、
これが初めてだ









少し動揺しながらも、必死に返答を考える









「…たいしたことじゃ」









こう言って首を振ってみせた
そうすると男は「ふむ、」と言って腕を組んでいた









「ここはうちはの領域、か」









うちは、という大嫌いな言葉に少し肩が揺れてしまう








このヘラついた男は、本当に暗部なのだろうか
と男を上から下へじっくりと眺める









顔は半分マスクで隠れていたが、目元を見る限り
整っていると予想できる






狐のお面を側面につけている









包帯を巻いた左の二の腕には、暗部のものと思われる
印がかかれていた
ペイントではなさそうだし、掘ってあるものだと考えていいだろう









靴を見ると
泥や塵なんかで大層汚れていた
きっとここまで来るのに
いくつもの道を辿ってきたのだろう









「…そんなに堂々と見つめられると照れるな」









そんな冗談は無視し、
わたしはふと思った








わたしがいま修行しているのは
手裏剣のみ

術の練習もしたかった
教えてくれる人がいないなら仕方がない

と今の今まで思っていた









この人なら、





暗部の任務がどれほど忙しいのかは私にはわからない


それでもわたしは
強くなりたかった









強くなれば
男の子にいじめられることもない
女に世話になる必要性もない


ひとりで、

生きていける









「…まあ礼は言っておくよ
じゃあ俺は報告があるから」









「あっ、あの!!」









突然大声を出したわたしに男の人は驚いた









名前も知らない

素性もなにもかも

わからない、けど









昔読んだ本の中の言葉で言うなら、



運命、というやつかもしれない









直感、宿命



運命








そんな言葉で表される感情に駆り出されたのだ









この人と、強くなりたい









「っわたしを、つよくしてください!!」









わたしのはじまりだった

8→←6



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作成日時:2018年3月18日 20時

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