【ワートリ】黒の救世主 5【三輪秀次】

185話 ページ25

「何これ、可愛い！」


「あー、これ着たいなあ」


「美味しそー」


と、はしゃぐ三輪のお姉さん。霊体なので、どれも実現しない。だが、見ているだけでも満足らしい。


「ここが貴方の実家？」


「実家…まあ、こっちの世界での実家ですね」


私の家に行きたいと言われ、おばさんの八百屋へ。私の姿を見たおばさんが奥から出てくる。


「いらっしゃい」


「…あ、そっか。おばさん、ただいま。Aです」


「えっ、その姿…それに声も…」


「変装してるんです。ボーダーの技術です」


「とりあえず、中に入って」


説明が面倒になるので、ボーダーの技術ということにしておいた。おばさんの指示に従い、中に入る。私が過ごしてきた部屋だ。


「その子が例の付き添い？」


「…えっ」


おばさんは私が誰かと一緒じゃないと自由に行動はできないことを知っている。だけど…その発言…見えてる？


「…いや、あんた…憑けてるのか。お祓いに行った方が――」


「大丈夫だから！憑いてるわけじゃないから！悪い霊じゃないから！」


やはり、おばさんにも霊感があるらしい。ということで、大まかなここまでの流れを説明した。勿論、私がボーダーを抜け出したことも、だ。


「大丈夫なの？」


「大丈夫じゃない…と思う。部屋に篭っていることにはしてるけど…」


「エネドラに頼んではいるので、ある程度であれば誤魔化せるかと。何かあればすぐに連絡が来ます」


この声はおばさんには聞こえていないようだ。シスが私だけに向けて言ったらしい。…確かに今回はエネドラに頼むのを忘れていた。


「でも、念のため早めに戻った方がいいよ。間が長すぎるとバレる」


「そうする。戻ろっか」


「…じゃあさ、夜にでも外に出ない？」


「いいけど…」


何かまだ用事があるらしい。夜ならまあ、何とかなるかな。


「じゃあね、おばさん」


「気をつけてね」



私達は基地に戻った。

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