79話 ページ39
「ちょっと」
「…」
反応がない。…やはり、そうかもな。
「…!おい!」
「動くな」
席を立ち、三輪の元へ行く。抵抗してくる手を右手で押さえて、左手で三輪に触れる。
「案の定、か。私の能力知ってるでしょ。言えばいいのに」
触れたのは三輪の額だ。熱い。間違いなく熱がある。咳や鼻水などの風邪症状はなさそうだから、ストレスが原因だろうか。だとすれば一時的でしかないだろうけど、楽にはなるだろう。さっきから私の発言に反応しなかったり、勝手に注文したのも熱で辛かったせいだろう。
「もう下がったかな。食べ始めに気付いてよかった。あー、お腹空いた」
「…」
変な目でこちらを見つめる。食べにくいのでやめていただけないでしょうか、と目線を送る。
「…まさかとは思うけど、私が倒れると思ってる?」
「…!」
図星か。三輪に限って私を心配してるのか?とか思っていたが、まさかその通りだったとは。治す度に倒れると勘違いさせていたようだ。
「私の力は栄養使うから、重症であればあるほど持っていかれる。で、あの時は死にかけだったから見事に栄養失調でぶっ倒れたってこと」
この程度で倒れてたまるものか。使う度に倒れる能力なら、不便すぎるし使いたくない。しかも、こんなところで倒れたらお店に大迷惑だ。
「…どうして助けた」
「はい?」
「どうして、あの時の死にかけの俺を助けた。今回だってそうだ」
私ぬとっては愚問すぎて笑えてくる。だから鼻で笑ってやった。三輪はイラッとしたような表情を見せたが、知るものか。
「人が人を助けるのに理由いる?」
よくある言葉だが、本当にそう思う。理由なんていらない。助けたいと思ったから助けただけのこと。それに、一度死を経験しているからこそ、目の前で死なれるのには抵抗がある。全てが私のように苦しい死に方ではないんだろうけど、やはり死んでほしくない気持ちは変わらない。
「結局はただの自己満足。損か得かなど関係ない、ってね」
過去に言った自分の発言を覚えていたのか、ハッとしたような表情をする。…はっきりと覚えてはいないが、合っているよな?…まあ、三輪も正確には覚えていないだろうし、いっか。
「早く食べないと、麺が伸びるよ?」
そう言って私は蕎麦を食べ進めていったのであった。
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葉月(プロフ) - 青い夕日さん» コメントありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします。 (2020年5月8日 0時) (レス) id: f4ed754532 (このIDを非表示/違反報告)
青い夕日 - 面白いです!更新頑張ってください! (2020年5月7日 20時) (レス) id: e84367e7a0 (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 侑華さん» ありがとうございます!頑張って更新しますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年4月11日 22時) (レス) id: f4ed754532 (このIDを非表示/違反報告)
侑華(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。大変かもしれませんが更新頑張ってください!楽しみにしています。 (2020年4月11日 11時) (レス) id: 4a19e93e40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/3f2cc79ad91/
作成日時:2020年4月4日 0時