子供でいたかった【ヒプマイ】 (ページ28)

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「A！！」

ラップバトルを終え、言われた通りの場所で待っていた。すると、飼い主を見つけた犬のように嬉しそうな顔をしながら、走って私の元へ来る

「二郎、お疲れ様」

「サンキュー！」

Aに近づくと、いつも通り、ふわっと良い香りがした。周りにいるギャルとは違う匂いだ。それがとてもたまらない

「寒くねぇか？」

「大丈夫」

秋も深まり、夜は肌寒い、もうすぐ冬が訪れ、あっという間に年が開けるのだろう

「今度は二人で秋葉原だな」

「うん、楽しみにしてる」

お互いバレてはいけない関係、だけど二人はそれでも良かった。

「…二郎といると、お兄ちゃんがいなくても良いかも、て思っちゃう

不思議だ…」

「そ、それ、て…」

次郎は変に期待をして顔を真っ赤にする、その姿を見ておちょくりたくなるのもまた事実

「最近ちょっと寂しくてさ、自分でもよくわかんないんだ…」

年上でしっかり者の彼女が見せた少し弱った姿、二郎は力になりたいと強く思った。

「俺、Aより年下だし…まだ。餓鬼だけど…！
寂しい想いは絶対！させねぇから！」

二郎は真っ直ぐ目を見てそう言った。Aは柄にもなく真っ赤な顔をして目を見開いた。

「俺が寂しく無い様そばにいてやるから！そんな顔すんなよ」

「凄く嬉しい…」

ドキドキと心臓が鳴り止まない、年下もありかも、の思ってしまった。彼は確かに頼りないところがあるが、それでも…

「二郎の、彼女にして下さい」

「っ！？」

意を決した言葉だ。そう言うと、さっきまで恥ずかしいことスラスラ言ってたはずの二郎は今まで以上に赤くなる

「そ、そういうのは…！男の俺から…！」

「なら、こんな所じゃなくてもっといいシチュエーションで待ってるね」

そう言って、二郎の襟首を両手で引き寄せ、頬にチュッと軽くキスをした。ウブな二郎くんは脳内ショート中、それが面白くて仕方がない

「おやすみ、二郎」

バイクに跨り彼に手を振る、二郎は力なくAが見えなくなるまで手を振った

「可愛かったなぁ…」

二郎の顔を思い出してニヤける、ファンの知らない二郎の一面、私しか知らないあの照れた顔

優越感に浸った。