ハイエナの嫉妬心に (ページ35)

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短編　5話ページ35

side 漣ジュン

｢ヒッ！！！い、今そこの茂みが動いたぞ！？｣
｢どう考えてもただの風だろう。守沢、いい加減落ち着きたまえ｣

守沢先輩と斎宮先輩の声に、Aは少し遠くなっていた意識を取り戻したようだった。気を持ち直したのか、俺の手を速攻で離し、この場から飛び出すように離れていった。

あ～あ、逃げられちまった

彼女の暖かさがかすかに残った手のひらを軽く撫で、走り去って守沢先輩に絡みにいった背中を恨めしくも見つめる。

｢守沢先輩〜！！茂みだけじゃなくて足元も気にしないと、幽霊に足掴まれてるかもですよ〜！！｣
｢なに！？｣

まーた脅かしてる…と出会ったころに比べて少し破天荒な性格を隠さなくなったAに、笑いそうになるのを、口の中を奥歯で嚙むようにし堪える。

｢ひぇ〜、隣で急にラブコメ始まっちゃったのかと思ったドキドキしちゃった！｣

俺の隣で、俺達のやり取りをAに負けず劣らずパニックになっていた遊木さんは、ようやく喋れるといわんばかりに声を上げていた。なんかすみません、と一言声をかければ、大丈夫と帰ってくる。

｢Aちゃんをあれだけ照れさせるなんて、漣くんは凄いね｣
｢まぁ、基本的に素直じゃないんですよね。そこを引き出してあげるのが腕の見せどころなんで｣
｢す、すごい余裕…！カッコイイね…！！｣
｢やめてくださいよ｣

そう指摘されるとなんだが気恥ずかしい。照れにより逸らした目線の行き場がなくなる。

｢俺も案外、浮かれてんのかな…｣

頬を掻き、空に浮かぶ月を見つめた。少し雲に隠れている月は、なんだが照れて逃げているようにも見えなくはない。守沢先輩が再度悲鳴を上げたところで、そろそろ可哀そうだからAを回収に行く。

多分、まだ恥ずかしさが尾を引いてるだろうから、俺を見たら狼狽えんだろうなぁ

可愛い顔が見れることに期待を持ちつつ、Aの背中に向かって足を進める。俺のやることに、いちいち反応を示す彼女の可愛さはかなり癖になっているみたいだ。