雪は白いが君は死ね【時透無一郎】

1話 厭夢 ページ3

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記憶の引き出しに手に掛ける



少しの躊躇いを含み、できたら開かないで欲しいとすら願ったが、それはあまりにも容易に滑らかな音を立てて開いた、開いてしまった。


刹那、目に見えない恐怖に後ろから襲われそうになり、あまりの怖さに思わず引き出しをとじた、すると恐怖で私を襲った魔物はおずおずとまたどこかに行ってしまう。


待って、きみはだれなの、どうしてここにいるの、何をしてるの。


聞きたいことは沢山あるのに、何故か声は出なかった。


出したら死ぬかもしれない、顔も知らない "アイツ" を引き止めたら殺されるという思考が頭を埋めつくして、何も出来なくなる。ついに呼吸すら危うくなったところで目が覚めるまでがいつものパターン。


もうずっとこうして夜を越えてきた。毎日毎日、この悪夢を見ないで済む日は無い。

それも今日で、5年と二月(ふたつき)になろうか。どれだけ時が経っても私は変わらず今も腑抜けのままだ。



これは私が人に触れ、人を理解して、恋をする。そして自分の意思で記憶を取り戻すまでの葛藤を描いた物語。

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