怪演女優 Fifty Two

流出 ページ23

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『…………。』

田中「ほんっとごめん……っ、ほんと、ほんっとにまじで、ごめん……。」


画面の向こうの私に向かってとにかく謝り倒している彼は、先程、元カノらしき人にLINEのトーク履歴を晒された男であり、私の彼氏でもある。

芸能人……というか、ジャニーズなどのアイドルの界隈に多いらしいけれど、たまにこういう事があるのが、アイドルとの恋愛のデメリットである。

既に亡くなってしまっている愛犬のソラちゃんが写真にいる事から、二股かけられているわけじゃないのは分かっているので、今は別に怒ってない。

まぁ、一瞬焦ったけど。

だけど、なんだかここで簡単に許してしまうのも癪なので、とりあえず謝り倒している様を見る事にする。


『とりあえず、あの人は元カノさんかな？』

田中「はい……。」

『いつ頃付き合ってたの？』

田中「デビュー前です……。」

『私と出会う前……と言うか、共演する前ってことだね。』

田中「はい、そう、そうです……。」

『トーク履歴晒すような承認欲求高めの女の人と付き合ってたんだね。』

田中「もう、なんも言えません……。」

『女を見る目があるねえ、樹くんは。』

田中「すいません、どんな皮肉も受け取らせていただきます……。」


だけど、短期間ではあるものの、アメリカと日本という超遠距離にも関わらず毎日連絡を怠らない樹くんが、私の事を嫌いになったとは思えず。

フローリングに正座した状態で質問に答える誠意のある、というか誠意しかない様子から、やっぱり二股をかけているわけではない事が分かって安心する。

けれど、まぁ、うん、不安はそこじゃなくて。


『……また晒される、とか、多分あるよね？』

田中「……無い、とは、言いきれないです。」

『正直だな。』

田中「すいません……。」

『……、よし、決めた。』

田中「はい。」

『樹くんの過去の恋愛の件が晒される度、私のメンタルだけが沈むの馬鹿らしいからさ、一個晒されたら、私と元カレとの写真を送り付ける事にする。』

田中「えっ！？元カレとの写真あんの！？」

『いや、当時のってよりかは、結婚パーティーの時に久しぶりに再会した中学時代の元カレとのツーショットがありますね。って事で送りまーす。』


無論、あれから修也くんと連絡をとっている訳でもないし、特にやましい事もないからこそ、見せられる写真である。

私の気持ち思い知れ、と、念じながら、樹くんとのLINEにその画像を貼る。

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