【ツイステ】でかけよ、オンボロ寮(仮)

237.接待セフルヘイト ページ37

VIPルームージェイドside


ジェイド「……」



部屋には自分以外誰もいない
ソファに体重を放るように腰掛け帽子を床に落とした


よりによってあの人に見られるとは、


随分と前の話だ
独り身の彼女の懐に入るのは実に容易かった
後ろ盾にしたおかげでラウンジの経営は円滑になり、
得意先になってからは時々商談という建前で顔を見に来る


ジェイド(…ドアは当分開けたままの方がいいですかね)

部屋の明かりは落としたまま、ドアの隙間から差し込む光が薄暗い中を照らしている
商談後の部屋には香水の匂いが充満していた
そして同じ匂いが自身にも残っている

言われるまで気がつかないほど、自分の鼻が匂いに慣れていることに吐き気を感じた


ジェイド(…よりによって、彼女の口から聞くとは)


軽率に近づいたのは浅はかだった
ただ見送りの姿を見られたと理解した途端に妙な焦りを覚え考えるより先に体が動いてしまったのだ

手袋を外し手の甲で口を拭う

行き場のない気持ちは重さを増すばかりで、テーブルを見つめた所で減るわけもない

何度擦っただろうか、感触は拭えることはないのに何かを消そうと手は止まらない

僕はどうしてしまったんだろう

いつもの仕事の一環、特別な感情はないただの接待
それをただ彼女に見られただけで気落ちしている自分がいる


そう言えば話すのはいつ以来だったか、


ジェイド(授業、は挨拶だけ、…あぁ)


気づけば、彼女が監督生さんと一悶着あって以来声をかけるのを避けていた

最初はまだ興味と入り混じっているような不確かに近かったが
ユウさんを庇う彼女を見た時、この感情が存外深いものに変わっていると気づいた

彼女の柔らかい髪を気に入っていた

ただ本人は地面に落ちたそれに見向きをせず、監督生さんの顔を見て安堵の表情を浮かべ


それを見た時、ドクンｯと心の臓が大きく脈を打った


彼に向けている感情がどんなものかは知らないが、それが自分に向けられることはないと
今思えば単純にショックを受けたのかもしれない
彼女に深い気持ちを抱いていることに気づいたのと同時に、それが酷く不毛なものだとも理解したからだ

なぜだろう

姿を見たせいか彼女の声が恋しくもどかしい気持ちになる
表情も仕草も浮かぶのに声だけが朧げで
避けていたと言うのに矛盾して今は無性に会いたいと思うのだ





ジェイド「……声が、聞きたい」









『誰のです？』





ジェイド「……


え」


『お疲れ様です、ジェイドさん』

238.餌は自分の方だった説→←236.頭骨割れてなーい?

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す