【ツイステ】おいだせ、おんぼろ寮(仮)

165.閉店エスコート ページ15

手を掴むと強い力で中にひかれ、体制を崩して中へ倒れこんだ
顔面からいくと思ったがボフッと受け止められ何が起きたのかわからず固まってしまう


『…え、っと』


握られて塞がった手を見た後に、男性の顔を見上げた


『…ジェイド、さん？』


そこには寮服姿の彼がいた
いつもと変わらない表情でにこりと笑いかけられ、ほっと胸をなでおろす
突然のことに先程までの緊張はどこかへ行ってしまった

彼は何にも言わずに手を引いて、薄暗い廊下の中彼の案内を頼りに進んでいく
話しかけるわけでもなく彼からは靴音しか聞こえてこない


(…まだ元気ない…？)


逆に機嫌でも悪いんだろうかと思い始めた
笑ってはいるけどそれはいつもだ
大きな背中をじっと見つめるが表情もわからず答えが返ってくるはずもない


(…手袋するだけで体温ってわからないもんだなぁ)


あまりにも沈黙が続くので自分の触れている彼の手に意識が向いた
昨日顔や頰を触れた時はまるで冬空に晒した後のような手だったのに今は普通だ
そう言えばこうして手繋ぐのは何回目だっけ


そう言えば一番最初も突飛なことをしてくる人だと思った
握手かと思って手差し出したら笑われたんだっけ




ー恋人みたいでしょう？ー






『…





フロイドさん、ですよね？』





フロイド「…なぁんで分かんの？オレジェイドの真似はすんげー自信あんのに」



くるっと振り返った彼の顔にいつもの微笑みはない
ゆっくり瞬きをすると目の色は反対に変わり、衣服のボタンを外して着崩す


『ジェイドさんは、この繋ぎ方はしないので』


空いてる方の手で指をさし、あはは...と笑うと
返ってきたのはフゥンとなんだか退屈げな返事だった
正直逃げ出したい気持ちはあるが手は離されないので不可能である
それに何だか今日の彼は大人しいので意思疎通はできそう



フロイド「クマノミちゃんさぁ」



…○ァインティング○モ？

知らぬ間にイソギンチャクのルームメイトの称号を手に入れたらしい

固有名詞ではあるが私の頭の中では「あのキャラクター」がやぁ、と登場した



フロイド「歩くの遅くね？」

『…えっと、すみません』

フロイド「…あー、これかぁ

最近ジェイド歩くのおっせーの」

『…はい？』


…言われてみれば、あれきり彼に「歩くのが早い」と
言ったことはないかもしれない


(…慣れてきたのか、合わせてくれてたのか)




ｸﾞｲｯ





『ひっ』

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