３週間【青】 (ページ36)

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そのまま気にせず出て行ってくれて良かったのに、渡辺くんは音がした私の方へ近づいてくる。

まだ姿は見られてない。

必死の抵抗で後退りしながら、上手く扉の方まで行けないかなって試みる。

隣の本棚の列に移動しようとした時、

渡「え…っ。なんでセンセーが？」

見つかってしまった。

「あの…ごめんなさい。全然聞くつもりは無かったんだけど、たまたま居合わせてしまって…」

渡「…ふぅん。聞いてたんだ？」

最初は本棚の端と端で会話していたはずなのに、渡辺くんがジリジリと距離を詰めてくる。

「いや、全部は聞いてない。はず」

渡「俺、告られた」

「うん…聞いた」

渡「オッケーしてた？」

「…してなかった」

渡「…何でだと思う？」

「…わからない」

渡「そこ聞いてないのかよ…」

はぁっとため息をついてなぜか軽く睨まれる。

「本当ごめん。あ…ほら、もうすぐチャイム鳴っちゃう。戻ろ？」

いつの間にか目の前にいて、じっと見つめてくる渡辺くんの視線に耐えられない。

スルリと渡辺くんの横を通り抜けようとすると、あっさり彼の左手で阻止される。

そう、まさに壁ドン状態。

私より少し背の高い渡辺くんが真顔で見下ろしてくるから、どこに目を向けて、何を話せば良いか全く分からず頭が真っ白になる。

「な…に？通して？」

渡「やだ」

ダメだ。授業も始まるし、これ以上彼のペースにハマってはいけない。

「何言ってるの、どいて」

少し強めに、私も真剣な顔をして言い返した。

渡「…ねぇ、今日は妬いた？」

「え？」

渡「俺、モテちゃってたよ。妬かないの？」

「…だから、何で妬くのって。いいから早く戻るよ」

渡「好きな人いるから断ったんだけど」

…渡辺くん、好きな人いるんだ。

ズキ…

え？

ズキって何？

誰だろうってちょっと気にしてる。

生徒の恋愛に興味なんて持ってどうするの。

渡「…センセ？」

「いいね、恋愛ちゃんと楽しんでるじゃん」

学校生活を充実させるのに恋も大事な要素だと思う。

渡「…楽しいよ。センセーが来てから毎日」

真っ直ぐ目を見つめながら彼が言う。

…それってどういう意味…？

ドクドクドクドク…

心臓が激しく脈を打ち、静かな図書室に鳴り響いていないかと不安になる程。

おそらく私の顔は今真っ赤だと思う

返す言葉も見つからず、渡辺くんの腕をくぐり抜けてひたすら走って次の授業へと向かった。