・ ページ9
*
「A、入るぞ」
「は、はい、どうぞ」
襖の奥から十四郎さんがそう言って、部屋に入ってきた。
「…悪いな。こんな狭いとこで」
「いえ、居させてもらうだけで迷惑を掛けてしまっているので、構いません」
「そうか」
「はい」
そこまで話すと、会話が途切れた。
空間を沈黙が襲う。
「……A、お前はどうしたい?」
「え?」
そんな空気を変えるように十四郎さんが言った。
…私は
「…やっぱり、ああ言われても、私はちゃんと父に認めてもらいたいです」
「そう、だよな。俺も同じだ。お前を幸せにすると決めたんだ。お前の親父さんに認めてもらわなきゃ、そんなの絶対無理だ」
「……後、もう少しですね」
「ああ」
もう少しで、二人一緒になれる。
そう思うだけで、十分幸せだけど、私はちゃんと祝福されて門出を迎えたい。
わがままかもしれないけど、それだけは叶えたい夢なんだ。
「A」
名前を呼ばれ、前を向くと十四郎さんに抱きしめられた。
こうして抱きしめられると、安心出来るな……。
*
41人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:土方美零 | 作成日時:2018年10月5日 21時