傘を差さない彼ら。【銀魂】【土方十四郎】 (ページ3)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:6,842 hit

・ページ3

＊

「…悲しいものですね。やっと、雨が降ったのに、想い人はやって来ない」

途切れ途切れに女は言った。

「雨だと傘で人目を離れて、自由になれる気がするんです」

「ヘェ」

゛自由゛と女は言ったが、その横顔には楽しさなんて、一つも感じられなかった。

それを見てたまらなくなった俺は思いもよらずこんな言葉を掛けた。

「…なら、俺がいてやるよ」

「え？」

女は、何を言っているのだと言い出しそうな顔をしてこっちを見た。

……自分でも何を言ってるんだと思う。

今日話したばかりの、ましてや他の奴の女なんて。

目の前の奴はしばらく考え込んでいたが、

「…意外です。あなたも雨宿り好きなんですね」

あまりにも純粋な答えを返した。

「ああ、まあ」

こっちの心境も知らずに、女はやっと笑った。

「でも、大丈夫ですよ。私にはあの人がいる。会えなくても、そう信じていたいんです」

「……っ」

そう言ったこいつの笑顔に、俺は胸が苦しくなった。

その時気付いてしまった。

俺はこの女を…Aを好きになっていたんだと。

気付いても遅い。

そんな自分を呪った。

＊