昇る、微熱の太陽

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海岸を離れて向かうのは、家とは少し違う方向。



「ごめん…ごめんな」


明日からはもう縋るのはやめるから、もう、前向いて歩くから。でも…最後に、今日は目を逸らすの許してくれないかな、



目的地までの一時間弱。無機質な空間は一人を感じてしまうから嫌で、ＣＤを流すけれど、ディスクに入っている曲が全てあいつのお気に入りの曲で、気付けば涙が溢れていた。

もうとっくにあの日は過ぎたのに、希望を捨てきれずにずるずる引きずった数週間が蘇ってくる。




ただいまと呟いても、「あれどこ置いたっけ…」って呟いても、おやすみって言っても、それは寂しく響くだけで答えが返ってくることは一度もなかった。
もしかしたら…なんて思ってしまっていたけれど、もしかしたらなんてあるはずなかったんだよな。




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不眠症気味なお前が俺と一緒でも窮屈にならないようにって、お互いリラックスできるようにって買った大きめのベッドも俺一人じゃ広すぎて、…苦しくて、ろくに寝られやしない。

俺の寝顔が好きだって言ったけど、俺だってお前がいなきゃ眠れない。


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思い出の曲たちを聴いて少しずつ色褪せ始めている過去を思い出しながら車を走らせていたら、気付けば目的地に着いていた。


一昨日から連続で休みをもらってる職場。

シンプルだけどセンスの滲み出るここは、自分たちで言うのもあれだけど、あいつとの共通の友人が経営する小洒落たカフェ。夜は、アルコールも出すから遅くまで開いてて客層も幅広い。


仲間も良いやつらばっかりで、すごく俺に合ってて気に入ってる。それに…ここで働いてなかったらあいつとも出会ってなかったと思う。俺の、大切な場所のひとつ。



「あれ、…みつ？」


あいつと出会った時のことを思い出しながらドアを開ければ、カウンターで洗い物をしてる横尾さんが驚いたように声を上げた。



「忙しい？」

驚く横尾さんに聞くと首を横に振るから、少しだけ俺の話に付き合ってほしいと言えば、そっと微笑む。



「店閉めるからコーヒーでも飲んで待ってて」

「ん、ありがと」


コーヒーを手渡され、突然来てごめんと謝る俺の肩を横尾さんはポンと叩き、表のメニュー看板を片付けに行った。


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「お待たせ」


窓際のテーブル席に座り外を眺めていると、向かいの席に横尾さんも座り、同じように外を見た。


「なんか今日の服、みつっぽくない感じだね」

「自分でも思う。でも、俺なりのけじめ」



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