昇る、微熱の太陽

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「けじめ？」

「あいつ…太輔と約束したんだ、離れる時…冬を越えられたら、春を迎えられたら連絡するって」

「っ…連絡は、」

「来なかった。もう春も終わって夏来たけど連絡は一切、…ずっと待ってたんだけどな、」

「けじめって…どんな？」

「……さすがにさ。ブラックスーツとかを着る勇気も、諦めもついてないけど…黒い服着て、あいつとよく行った海行って、じゃあねって、」



横尾さんは俺と太輔の事を誰よりも知ってる人だった。多分、記念日とか初めてのデートの場所とか、ほぼ知ってるんじゃないかな。…恥ずかしいけど

…だから、今日は横尾さんに話を聞いてもらって、明日からちゃんと胸を張って生きていけるような準備をするためにここに来た。




「…じゃあね、なんて言えなかったけど、っ」

「そっか」


外はもう太陽が沈み、星が見え始める頃。外の空気と店内の照明が合わさり、雰囲気が増す中、俺は横尾さんの前で涙を流した。



「どうして、あいつが…？あいつを連れて行くなら俺も一緒に連れて行ってほしかった、太輔は、俺のすべてだったのに、」

「…みつ、」


弱い言葉ばかりを並べる俺の背中を、席を立った横尾さんがさすってくれる。久々に感じた人の温もりだった。
溢れるほどの太輔の温もりに触れていた日々の事を思い出して余計に涙が溢れてしまう俺に、横尾さんが言った。



「今日までよく頑張ったね、みつ」

「もう、」

「ん？」



(もう太輔には会えないの？)

(太輔どこにいるの？)



「…ううん、ありがと、」



口に出そうとした言葉を必死に飲み込んだ。言ったら、俺はもう止まれない。言ってしまったら最後、きっと胸を張って生きてなんて行けないと思った。

あいつの事、あいつと過ごした日々の事…忘れるつもりなんて一切無いけど、今のままじゃダメだってこともわかってるから、


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「あいつね、あんな状態だったのに俺の事ばっか心配すんの」


太輔は、原因不明の病だった。

ある日、体調不良を訴える太輔を病院に連れて行くと、随分と診察に時間がかかった。不思議に思ったけど、結局その日は何事もなく診察を終えて、薬を貰って帰宅した。

…けれど、処方された分が飲み終わる頃になっても体調は回復しないどころか悪化していった。

なんだか…いても立ってもいられなくて、大丈夫だと言い張る太輔を引きずって違う病院に連れて行けば、準備が出来次第入院するように、と。

桜の綺麗な春だった。



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