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俺を置いて行くなって、これから先もずっと二人で一緒にいるんだろ、って言ったのに。あいつは俺の頬を撫でて、ちゃんと笑ったのに。



ーー『大丈夫だよ。ほら、眉間にシワ寄ってる』


そう、綺麗に笑った。…大丈夫だよ、ってどういう意味だったのか、俺は知らない。考える余裕なんて、考えたくなんて、なかった。

けれど、眉間にシワが寄ってると、俺の眉間を人差し指で つん、とタッチするそのあいつの顔がほんの少し苦しそうだったこと。気付かない程、俺たちは半端な気持ちで一緒にいなかった。



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いつだってお前は、俺の事ばかり考えて。

付き合い始めてからあの日までずっと、俺は大事にされてきた。ありがとなって、それくらいは言おうと思っていたのに、せめていなくなるなら最後くらい言わせてほしかったのに、そんな言葉出なかった。笑顔さえ保てなかった。


もうずっと前、笑ってる顔の方が好きだなんて言われたっけ。なのに俺は、最後の最後で泣いてしまった。自分の勝手な気持ちだけ伝えて、それで、




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二人のものが溢れる家で、一人で過ごすことが多くなってから、二人でただその時のことだけを考えて幸せに笑い合ってた頃の事が頭の中に突然浮かぶ事が増えた。

そんな幸せなフラッシュバックさえ、もう最近は色褪せて。ずっと抱えていたいのに、神様だかなんだか知らないけど、俺からどれだけのものを奪えば気が済むの。
…あいつだけで十分だろ?何よりも大切なあいつを…それだけじゃ、まだ?



「……ぜってー…ぶっ飛ばしてやるから、っ」



そう呟いて、思い出を探すためにスマホを開くと、ここに来てからもう一時間以上経っていることに気が付いた。もう太陽も沈みはじめてる。




「帰るか」


言った俺の心は冷静だった。暗くなりはじめた空を見ても、睨まないくらいには、落ち着いて。

だってほら、

「…目閉じれば会えるもんな、」



こぼれる涙には気づかない振りをして、そっと夕日に背を向けた。

どれだけ俺が苦しんでも、どれだけ俺が泣いても、いつもと同じように日は落ちて、また昇って…それを繰り返す。



幸せだった過去は色褪せていってしまうのに、昇る太陽は暖かくて、錯覚してしまいそうになる。

…まだフラフラ買い物に行ってて、俺にただいまって言わないだけで、まだ、お気に入りのあの店にはいるんじゃねえかって。そんなはずないのに。



「まだ…かえってこねーの…?」


…鍵ならいつでも開けてあるから。




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茉莉花(プロフ) - nicole155さん» 初めまして。実は中盤からちゃんと描けているか不安になっていた部分もあるので、素敵な感想を頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます! (2018年8月14日 1時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
nicole155(プロフ) - はじめまして。お話、とてもおもしろかったです。いい意味で、お話の展開がわからなさ過ぎて、とてもハラハラしました。蜃気楼がテーマだったと知って、あらためて蜃気楼リピートしてます。素敵なお話をありがとうございます。 (2018年8月8日 8時) (レス) id: 5edbe27f7b (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - なみこさん» はじめまして、コメントありがとうございます!こちらこそお読み頂きありがとうございます!え〜…嬉しいです^^笑 これからも頑張りますのでよろしくお願い致します! (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - 白雪さん» ファンだなんて…!泣 こちらこそありがとうございます!本当に嬉しいです…これからも頑張りますのでよろしくお願い致します! (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
なみこ(プロフ) - はじめまして!更新ありがとうございます!本当に個人的に大好きなお話なので更新されるたびに声が出てしまいます笑 これからも楽しみにしております! (2018年7月23日 15時) (レス) id: 3a6b1b4e2c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茉莉花 | 作成日時:2018年7月5日 18時

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