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『これ一緒に使おうと思って持ってきたんだ』
って無邪気に笑う顔が。
『髪の毛くらいちゃんと拭いて』
って呆れる顔が。
俺を抱きしめる華奢な身体。抱きしめられた時にふわっと香るお気に入りの香水の香り。好きって俺の身体に染み込ませるように呟く声。怒ると途端に鋭くなる目や空気。…俺の体に触れる細い指。
何を取ったって愛おしくて、直してほしい所はいくつかあったけれど、嫌いなとこなんてひとつもなくて。
あいつを形成するすべてを愛していたのに、ある日突然なくなった。俺の前からすべて。
愛していたそのすべて…忘れるはずなんてない。忘れたくも…なかったのに。
年かな、日を追うごとに色褪せていってる。…ふざけんな、まだそんな年じゃ、
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犯人なんていやしない。誰も悪くない。けれど…いや、だからこそ、行き場のない想いが込み上げる。
…俺が悪かったのかな、守ってやれなかったから。
だとしても、この景色には何の罪もない。これっぽっちも悪くなんてないのに、俺は必死に、美しすぎる景色を睨んだ。…この景色の先にいるであろうあいつを思い浮かべて。
(…そんな怖い顔しないでよ)
声が聞こえた気がした。
「っ、」
でも一瞬で消えてった。返事をする前に、そっと。
…気付いたら、太陽に向かって手を伸ばしていた。……頼む。頼むから、行かないで。
どこに行ったら会える？…会えるなら、どこへだって行く。何日かかってもいい、会えるなら。
「検索したら出てくる？…おまえが、いるとこ、」
呟いて、ポケットのスマホに手を伸ばす。電源をつけた途端、世界が歪んだ。めいっぱい歪んではこぼれ落ち、まためいっぱい歪んではこぼれ落ち…袖で無理矢理拭って見えたのは、数滴しずくの落ちた液晶画面。
…これいつの写真だっけ、
少し日の沈み始めたここで、おまえが夕日を撮影している後ろ姿。待ち受けに設定したのは、俺だった。あまりに絵になるから。バレたらうるさいから、隠れて設定した。
その日につけた足跡。たしかこの辺だったはずだけど。
「…あるわけねえか」
だってもう一年も前の事。
あいつさえいれば、他に何もいらなかったのに。嘘みたいに速いスピードで、何かがあいつだけ連れてった。思い出だらけの夏は、あいつと共に消えていった。もうやって来ない、俺たちの夏。
(…まあ、俺一人で長い夏を過ごすなら、来ない方がマシだけど)
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茉莉花(プロフ) - nicole155さん» 初めまして。実は中盤からちゃんと描けているか不安になっていた部分もあるので、素敵な感想を頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます！ (2018年8月14日 1時) (
レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
nicole155(プロフ) - はじめまして。お話、とてもおもしろかったです。いい意味で、お話の展開がわからなさ過ぎて、とてもハラハラしました。蜃気楼がテーマだったと知って、あらためて蜃気楼リピートしてます。素敵なお話をありがとうございます。 (2018年8月8日 8時) (レス) id: 5edbe27f7b (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - なみこさん» はじめまして、コメントありがとうございます！こちらこそお読み頂きありがとうございます！え〜…嬉しいです＾＾笑 これからも頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - 白雪さん» ファンだなんて…！泣 こちらこそありがとうございます！本当に嬉しいです…これからも頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
なみこ(プロフ) - はじめまして！更新ありがとうございます！本当に個人的に大好きなお話なので更新されるたびに声が出てしまいます笑 これからも楽しみにしております！ (2018年7月23日 15時) (レス) id: 3a6b1b4e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉莉花
| 作成日時：2018年7月5日 18時
