06:月下の青年 ページ16
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ぱっと目が覚めると、まだ外は暗い。本来なら今日は夜勤の守衛のアルバイトが入っている日だが、セノさんに止められそれも無くなってしまったのだ。
先刻の魔物による襲撃を思い出してしまった。心配することしかできない私が情けない。
せっかくだから何かお腹に入れたいので、牛乳をカップに取り出して温めることにした。アアル村へ来たばかりの頃、キャンディスと色違いで買った薄桃色にゆるキャラ調の羊が描いてある物だ。
「羊…」
( そういえば……。 )
セノさんは今頃パトロールに行っているのだろうか。
なんだかセノさんに何から何までもらってばかりで、一つも恩返し出来ていない気がする。気がするというか、絶対にそうなのだが。
うーんと頭を捻らせながらホットミルクを啄いていると、玄関の方の扉が開く音がした。そちらへ目線を送る。
「……起きていたのか」
セノさんだった。
「目が覚めてしまって…セノさんはパトロール帰りですか?」
「ああ。少し休憩をしていこうと思ったのと、忘れ物を取りに来た」
「仮眠ですか?毛布を用意しますね」
「いや、睡眠は取らない。すぐまたパトロールに行ってくる。朝ご飯までには帰ってくるよ」
朝ご飯まで!?今は深夜の二時過ぎだから……。いや、というかそれよりも。
「セノさん、睡眠は取ってますか?」
「職業柄あまり睡眠は取らないんだ。慣れているから問題ない」
セノさんがいいと判断しているのであればこれ以上私が口出しをすることはないんだけど……。漸く口を付けられる温度になったホットミルクを一飲みして、兜を外す彼へ焦点を合わせた。
「私に出来ることはありませんか」
「……?何故だ」
「セノさんのお役に立ちたいんです」
私の言葉を認めると、少々驚いたように見開く瞳と目が合った。それから壁へ背を預け、腕を組む。
「気負わせてしまったなら謝る」
「いえ、違います!私はセノさんに何も返せていないので…」
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咲原(プロフ) - まるさん» 読んでくださり光栄です。。!ありがとうございます(˶' ᵕ ' ˶)! (8月13日 12時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
まる - 最高でした!!お疲れ様です! (8月13日 6時) (レス) @page48 id: 626fa9ab7b (このIDを非表示/違反報告)
咲原(プロフ) - あいうさん» ご覧頂きありがとうございます!元ゲームの雰囲気を壊さずに慎重に書いていましたのでそう言っていただき光栄です……!自分らしく執筆を頑張りますね! (2023年2月21日 16時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
あいう - セノの小説あまり無かったのでめっちゃ嬉しいです!話しも自然ですごいです。めっちゃ好きです。自分のペースで更新頑張って下さい!応援してます!! (2023年2月20日 1時) (レス) id: 914ffe60d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲原 | 作成日時:2023年1月19日 12時