・ ページ10
.
早起きをした私は、キブシの花でも見ようかと庭へ出ると、血相を変えた松おばさんがこちらへ駆け寄ってきた。
「Aちゃん!大変!」
「え……?どうしたんですか?」
「さっき船から難しい名前を名乗る集団が降りてきてね、私の家を片っ端から調べられて…もう怖かったわ!」
いつもはどこか上機嫌なのに、今日ばかりは顔を歪めているから、相当なことだったのだろうと思う。だけど、こんな殆どの人が知らないような島に、どうしていきなり家宅捜索のようなものが入ったのだろうか。
「Aちゃんには何とかして逃げてもらいたいんだけど…」と松おばさんと頭を捻らせていると、件の集団とやらが近付いてきた。
「我らはダンガンロンパ再興委員会である。お前の家を調べさせていただく」
「は……?だんがん……?」
聞いたことのない名前だ。家に押し入ろうとする人を受け止めながら、理不尽な押し入りに抗議する。
「待ってください!何か嫌疑でも掛けられているんでしょうか…!?」
「我らは最原終一、春川魔姫、夢野秘密子の三人を捜索している」
( …え………。 )
どうして彼らが捜索されているのだろうか。
「その三人を探し出してどうするつもりですか」
「お前に教える義理はない」
冷酷にそう言い放たれ、抵抗虚しく家への侵入を許してしまった。人々の勢いに飲まれ、庭へと倒れ込む。
「つか捕まえたらどうするつもりなんだ?」
「俺もよく分かんねーけど、まあ一人は見せしめに殺すだろうな」
「使える分だけ使うってやつか。ダンガンロンパの恐ろしさを世間に見せつけてやろうぜ!」
( まずい………! )
この集団に捕まったら、少なくとも三人の誰かは殺される。それだけは絶対に避けたい。避けたいのに……。
「何も思い浮かばない……」
この状況に頭の整理は追いつかず動悸は早まるばかりだ。ただ、三人が過去について何も話さなかった背景が、少しだけ見えた気がした。こんな大事に三人が巻き込まれているなんて思いもしなかった。
( 私は何も知らない…。 )
それでいいとかいう範疇ではなく、ただ、今更知ったという事実が申し訳なかったのだ。
.
10人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲原(プロフ) - ののさん» 読んでくださりありがとうございます!嬉しいです。。(,,> <,,)! (2月28日 17時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - ちょーーーー良かったですт тт т (2月23日 9時) (レス) @page16 id: 42f250ead2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲原 | 作成日時:2024年1月12日 21時