木五倍子が垂れる空蝉【ダンガンロンパ/最原終一】 (ページ5)

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それからというものの、三人には毎日畑仕事やら家事やらを手伝ってもらい、家族のように過ごす時間が非常に多かった。

彼らがここに来るまでの経緯だとか、これまでどんな人生を歩んできたのだとか、誰もそういったことを語ろうとはしなかったけれど、私はそれで十分だと思った。

互いのパーソナルスペースを保つだとか、過干渉する必要はないだとか、それ以前に、ただ近くにいるだけでいいと思っていたから。そこに深い意味や理由なんて要らない。

「高宮～、本当に手で取って平気なのか？」

「うん、大丈夫だよ。収穫した梅はそのカゴに入れてね」

日差しの照りが強くなってきた今日この頃。庭に聳え立つ梅の木から梅を収穫するため、三人にも手伝ってもらうことにした。

それほど高さもないため、小さなハシゴを使いながら梅を収穫していく。

「収穫した梅は梅干しにするの？」

「うん。取った後に漬けるまでの工程もやるからね」

押し黙ってしまった春川さんを見て、適度に手伝ってもらうことにしようと心に決めた。私も口だけではなく収穫しなければ、とカゴを持ち上げると、最原さんに声を掛けられる。

「高宮さん、あの花の名前はなんて言うの？」

「あ、あれは……」

最原さんの視線の先に、細長い枝に連なる黄緑色の小さな花を携えた木がある。

「キブシって言うの」

「キブシ……？」

「うん。おばあちゃんが植えた花で、お母さんもこの花が一番好きだって言ってた」

小さく繊細なこの花を見るだけで、数々の思い出が蘇る。

「この花を見てたら、高宮さんみたいだなって思ったから……」

「…え」

「……？あ、ごめん。変なこと言っちゃったかな？」

眉を下げて「ごめんね」と笑う彼が、陽光を浴びつつカゴを持ち上げる。梅の木を見上げれば、葉や実の形をした影が落ちる。

( 変なことって……。そりゃあ、変でしょ。 )
お母さんはキブシのように柔らかく穏やかな人だったけれど、私がお母さんに似ていた部分なんて一つもないのだから。

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