15話 ページ17
「貴女と一緒にいた人、MAD TRIGGER CREWの左馬刻さんですよね?」
疑問形だけど、核心を持った強い声色。
恐らく、私よりも年上。二人ともスタイルもよく美人だ。
私たちが来店した時から、左馬刻さまに視線を送っていた。
「…左馬刻さまの、知り合いの方ですか?」
努めて冷静に、言葉を紡ぐ。
大丈夫、落ち着いて、こんなこと慣れっこだ。
「あなた、左馬刻さんの彼女なんですか?」
「…だったら、どうするんですか」
「ふふっ…いや、遠目から見て、兄妹かなぁって思ったんでぇ」
品定めするような視線も、突き刺さる言葉も、今まで何度も経験してきた。
だから、大丈夫。
「そうですか…それで、何か用があったんじゃないんですか?」
取り乱す様子のない私に、少し驚いた様な素振りを見せた後、たちまち嫌悪に顔を歪める二人。
「…子供みたいなあんたじゃ、左馬刻さんに釣り合わないって言ってんの」
「そうそう。左馬刻さんが子供相手に本気になるわけないじゃん」
「彼には、もっと華のある人が側にいるべきなの。例えば、私たちみたいなさぁ」
嘲笑う声が、頭に響く。
左馬刻さまと釣り合っていないなんて、そんなこと私が一番自覚している。
綺麗でかっこよくて、ぶっきらぼうだけど優しくて、仲間思いで…
私なんかが側にいてはいけないって、数え切れないほど思った。
それでも、
「ご自身の方が相応しいと思うなら、直接左馬刻さまに声をかければいい」
あの人は私を、大切に、大切に愛してくれる。
誰に何を言われようと関係ないと、俺が好きだと言っているのだから側にいればいいと、そう言って下さるから。
左馬刻さまが私を必要として下さる限り、何を言われても大丈夫、平気だ。
「その結果、彼が貴女方を選ぶなら、私は何も言いません。だから堂々、本人に伝えて下さい。自分の方が相応しいって」
相手の目を真っ直ぐ見つめて言い切れば、わなわなと口元を震わせ、ギロりと目付きを鋭くさせる。
「こっちが親切で教えてやってんのに…‼‼」
激昂した一人が、大きく手を振りかぶる。
驚いた、公共の場で手を出してくるとは…
なんて、他人事のように頭の片隅で考えながら、受け入れるように目を瞑る。
痛いのは、嫌だな…でもまぁ、叩くことでこの人たちの気が済むなら、別に、
「俺の女に、何か用か?」
突如響いた、低く威圧感のある声。
思わず、目を開ける。
目の前には、振り上げられた女性の手を掴む、愛しい人の姿があった。
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和三盆糖(プロフ) - 香織さん» 閲覧、コメント誠にありがとうございます。ベタ甘な左馬刻さまが刺さったようで嬉しいです…!!マイペース更新にはなりますが、引き続きお楽しみいただけましたら幸いです。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆糖(プロフ) - さちゃんさん» コメントいただいたのに直ぐに気付くことができず、お返事出来ておらず申し訳ございません。かなり時間が経ってしまったのでもう届かないかもしれませんが…閲覧、コメント誠にありがとうございます。どうにか完結まで頑張りますので、また遊びにいらして下さい。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
香織(プロフ) - 久々の更新ありがとうございます!とても気になる展開と安定の左馬刻さまっぷりで最高です。続きを楽しみにしてます! (2021年6月5日 23時) (レス) id: be1cefb69b (このIDを非表示/違反報告)
さちゃん(プロフ) - とてもすきですT_T更新楽しみにしています>_< (2020年4月6日 1時) (レス) id: ffa613b322 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:和三盆糖 | 作成日時:2019年3月3日 19時