検索窓
今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:73,698 hit

13話 ページ15

口いっぱいにショートケーキを頬張って、黙々と咀嚼するA。
段々と目を輝かせて、こく、と飲み込んで、一言。

「美味しい…‼」
「そーかよ。良かったな」

お約束とばかりに口の端についたクリーム。
ガキかよ、と思いつつ、そんな姿すら愛おしいと思うのだから俺も大概だ。

親指でクリームを拭ってやり、そのまま口に運ぶ。

「ん…悪くねぇな」

甘ったるいもんは好きじゃないが、これはくどくない甘さで食べやすい。

コーヒーも中々だし、流石、先生が勧めるだけある。

ふと、大人しくなったAを見やれば、顔を真っ赤にして俺を見つめていた。

「さ、左馬刻さま…‼‼ここ、外です…‼‼」
「だから何だよ」
「人が‼見てます‼」
「見せつけときゃいいだろうが」

そう。Aは俺の女であり、俺もまたAのものであるのだと、俺達に好奇の目を向ける奴らに見せつければいい。

異性から向けられる、絡みつくような熱っぽい視線。

同性から向けられる、何故お前が、と言わんばかりの嫉妬の眼差し。

Aが可愛らしいのは勿論だし、自分の容姿が整っているのも自覚はある。
こんなの珍しいことではないが、何度味わっても鬱陶しいことこの上ない。

野郎共は俺が睨みつければ顔を青くする軟弱な奴ばかりだが、女共の中には何を勘違いしているのか、自分の方が相応しいとAにやっかみをつける馬鹿がたまにいる。

俺がA以外の女に靡くなど、あるわけがないのに。

だから、視線を感じたら出来る限り牽制してやるんだ。
お前らが入り込む隙間なんてありはしないのだと、分からせるために。

「ほら、食わねぇなら俺が食っちまうぞ」
「…左馬刻さま、甘いものは嫌いなんじゃないんですか?」
「ここのは食える」
「!」

一瞬目を見開いたかと思えば、ふにゃりと微笑むA。

「…何でお前がんな嬉しそうなんだよ」
「えへへ…左馬刻さまと美味しいものを共有出来るのが嬉しくて、つい」

些細な出来事にすら、心底幸せそうに笑うお前に、どれだけ俺が心を掻き乱されているか知ってるか…?

「そうかよ」

素っ気ない返事をして、それでも思わず緩みそうになった口元を隠すように、コーヒーに口を付ける。

心地いい苦味と共に、どうしようもない愛おしさが心を満たしていくようだった。

14話→←12話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (106 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
305人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

和三盆糖(プロフ) - 香織さん» 閲覧、コメント誠にありがとうございます。ベタ甘な左馬刻さまが刺さったようで嬉しいです…!!マイペース更新にはなりますが、引き続きお楽しみいただけましたら幸いです。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆糖(プロフ) - さちゃんさん» コメントいただいたのに直ぐに気付くことができず、お返事出来ておらず申し訳ございません。かなり時間が経ってしまったのでもう届かないかもしれませんが…閲覧、コメント誠にありがとうございます。どうにか完結まで頑張りますので、また遊びにいらして下さい。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
香織(プロフ) - 久々の更新ありがとうございます!とても気になる展開と安定の左馬刻さまっぷりで最高です。続きを楽しみにしてます! (2021年6月5日 23時) (レス) id: be1cefb69b (このIDを非表示/違反報告)
さちゃん(プロフ) - とてもすきですT_T更新楽しみにしています>_< (2020年4月6日 1時) (レス) id: ffa613b322 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:和三盆糖 | 作成日時:2019年3月3日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。