F 10 ページ10
「藤ヶ谷……」
優しい手に
優しい北山の声。
「……好き」
え？！
驚いて体を起こす。
勢いよく起きた俺に
「え？！
藤ヶ谷？！」
顔を真っ赤にして驚いてる。
「今のって…」
「今の？
えっと、何？」
とぼけないで。
「好きって…」
「なんだよ、それ」
引きつった笑い顔。
「北山」
「寝ぼけてる？」
「しっかりしてる！
寝てないっ」
俺の真剣さに
「起きてんなら、早く起きろよ」
と目を逸らした。
「待って！」
目を逸らすってことは、俺には聞かれたくなかったの？
じゃあ、その好きは…
…俺の好きと同じ？
「俺のこと……好き……？」
お酒のせいじゃなく、顔が熱を持つのを感じる。
ねえ、北山。
こちらを向いた北山の眉は下がっていて
「どうしたんだよ？」
と、手が頬に伸び、触れた。
「なんで泣いてんの？」
指先で涙を拭いてくれる。
俺…
泣いてる？
「好き。
北山…
俺、北山のことが、好き」
涙が止まらない。
「さっきの好きは…
襲うって…
そういう好きだと思っていい？」
北山は何も言わず、涙を拭ってくれる。
「北山…」
そっと北山の手が離れると、立ち上がり、隣りに来て座った。
「…マジで言ってる？
本当に酔ってない？」
泣きそうな北山。
「本気。
ピアスの彼女より、きっとずっと前から北山のことが好き」
「え？
ピアスの彼女？」
「うん。
ピアスのイニシャル…彼女でしょ？」
「見た…のか？」
「うん」
北山は静かに大きく息をすると、俺の腕を持ち引き寄せた。
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作者名：咲良
| 作成日時：2017年8月11日 1時
