好きだと伝える魔法があれば 《前編》

K 2 ページ2

ひとりでの仕事が終わって、楽屋を出た時だった。



『きたやまっっ』



どこからなのか、わからない。


でも、しっかりと聞こえた藤ヶ谷の声。


長い廊下の前後を見ても、

藤ヶ谷はいない。


今日、この局には仕事が入っていないはず。


なのに、聞こえた藤ヶ谷の声。



「…藤ヶ谷？」



なんだったんだろう、今の。


幻聴なんて、俺の片想いも末期らしい。


ダメだ、ダメだ！


頭を振り、気持ちを切り替える。


マネージャーの待つ駐車場へと急いだ。


今日はもう仕事も終わりだ。


ゆっくりしよう。


駐車場へと着き、車に乗り込んだ。


後は帰るだけ。



「家に直行でいいですか？」

「直行で大丈夫。よろしく」

短い会話が終わると、静かに出発した。


体を座席に預け、ゆっくりと目を閉じた。




もうすぐ家に着く頃、

マネージャーの携帯が鳴り始めた。


鳴っては切れて、鳴っては切れての繰り返し。


勿論運転中だから、電話には出ない。


「電話、長くない？

停められるとこあったら、電話出てね。

急用だとマズいし」


「じゃ、すみません」


コンビニの駐車場へと入り、マネージャーは折り返してる。


電話の間に買い物でもしようか。


ドアへと手を伸ばした時



「え？！どこですか？！」


びっくりする声を出し、表情が硬くなってるマネージャー。


何か、あった？


「はい……はい…

…わかりました」


普通じゃない声色に、背筋がぞっとした。


心臓が煩く音を立てる。



「……どうした？」



電話を切ったままで放心状態のマネージャーに聞く。


「あ……きたやまさん…


…ふじがやさんが……」





！！！！！！！！





「俺も行くっ」





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