君に会うため【地縛少年花子くん】 (ページ18)

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16時の書庫　其の伍ページ18

バタン、と完全に扉が閉じたのを確認して境界の外へと移動する。
……花子くんの視線が痛い。

「ねぇ、ツルガ」

うん？と振り返る。目先にキラリと光る銀色。
花子、と慌てたように光くんが叫んだ。

「えーっと……とりあえず」

光くん、二人にしてくれる？と笑みを見せて。
ヤコさんが何かを察したのか光くんを連れていってくれた。

ごめんね光くん。今度ジュース奢るからね。
心中で謝って、花子くんと向き合う。

包丁は下げられていて、けれども鋭い眼光が私を射ていた。
そんなに睨まなくても逃げないよ、と肩を竦めてみせる。変化はない。小さく溜め息を吐いて花子くんを見た。

「私ね、死んでるんだ」

正確には、死にそうになった、かな。
そう言った私に花子くんはえ、と声を漏らした。でも、と溢した声は続くことはない。

「自分でも分からないんだ。でも、神様に許された。私はまだ、ここで生きるよ」

花子くんはただ静かにそっか、と呟いた。

「私はもう帰るね。寧々ちゃんによろしく」
「ツルガ」
「ん？」

何かあったら、俺を呼んで。
そう言って渡された小さな小さな白い鶴の折り紙。

白杖代でも入ってんのかなあ、なんて。
ありがとう、と伝えて胸ポケットに入れた。

「またね、花子くん」
「うん、またね」

夕明かりが花子くんの透けた体をやけに綺麗に浮かび上がらせていた。