君に会うため【地縛少年花子くん】 (ページ12)

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源兄弟と花子くん　其の肆ページ12

「うらあああ」

刀身を強く握ったまま輝先輩の方へ体を押し込む光くん。
銀色を覆い隠すようにベットリとついた赤い血に輝先輩は焦りを見せた。

「バカにすんじゃねー！！」

叫びつける光くんは口を閉ざすことなく言葉を紡ぐ。

「オレは弱いし！輝兄よかバカだけど！何も考えなくていいなんてウソだ！！そんくらいわかる！！」

光くんは自分で考えて出した答えを持っている。輝先輩の言うことだけじゃなく、自分の。

「今すぐは無理だけど……輝兄みてーにオレももっと強くなるから。それからどうするかオレが決める。必要ならオレが祓う！」

だから手を出すな、と。そう言い切った光くんは少し泣いていたけど。
それでも、十分に格好良かった。

「……本当はここまま祓ったほうがいいんだろうけど。お前に嫌われるのはいやだし」

わかったよ、と言いながら私たちに背を向ける輝先輩に安堵の息を漏らした。

花子くんと別れて光くんを保健室へと連れていく。右手を引いて、雷霆杖を預かって。
まだ授業中の静かな廊下を二人で歩く。

「あ、あの、」
「ごめんね」

え、と困ったような声を出す光くんを見ることなく歩みを進める。

私は光くんが怪我をしなくて済むように飛び出していったはずのに。
結局はこうなっている。私がもう少し早く止めていれば。

「あ、オレ、自分で」
「やらせて」

保健室で軽く手を洗ってもらい砂を落とす。
包帯を丁寧に巻き付けていく。

思っていたよりもずっと深く切れていたらしい。
パックリと割れた手のひらが痛々しかった。

「先輩が来てくれて助かりました」

きっとオレ一人じゃ、兄貴を止められなかったから。
裏のない笑みを浮かべてそう言ってみせる光くんにありがとう、と伝えて。

自分の情けなさに、涙が出そうになった。