幼なじみコンプレックス[赤司征十郎]

コンプレックス5 ページ5

赤司side


適当に置いたせいで少しシワになっているシャツに手をかけた。



Aは机の上で気絶している。今ごろ夢も見ていないほど深い眠りにつくころだろう。


胸ポケットにある時計をとり、今が何時かを確認する。
よほど長く営んでいたのか、短い針は10を指していた。


ああ、確かこの時間はうるさい国語の女教師だったな…

そんなことを考えつつ、Aの膝の裏と背中に手をやるのだった。





放課後、いつものように部活へ足を運ぶ。
エナメルバッグを握りしめ、歩いていると、


「……赤司君」

後ろから、ぬっと現れ、声をかける。

突然のことに、少し驚きながらも平然をなんとか保つ。ああ、この声は、


「……ん？なんだい黒子」


「いえ、バスケ部に行こうと思っていたら、赤司君がいらしたので。一緒に行きませんか」


「ああ、構わないよ」


階段を降りながらそういう。

まったく、どこでも構わずいきなり現れるのはよして貰いたいものだ。今だって、階段から落ちたらどうしてくれるつもりだったんだ……。


こんなことをオレが思ってるとは知りもしないであろう黒子が、やはり、オレの予想内のことを言う。


「赤司君だけですよ、僕が背後から現れて驚かないのは。……なんかこう、嬉しいですけど……悔しいです」


「はは、オレだってびっくりするさ。あまり表情や行動に出ないだけだよ。」


「それがスマートなんですよ、癪ですね」


ひどいな、と苦笑いする。
そう、顔に出さないだけで、オレだって驚きはする。楽しいことは楽しいと思うし、悲しいことは悲しいよ。


「……赤司君て、なんだか神代さんと似てますね。」


「…………オレが？神代と？」


そうだろうか？
少なくとも、オレの知ってるAは、ふにゃっと笑って、せーちゃんせーちゃん言ってるバカの印象しかない。
あと、インラン。


「神代さんって、ほんわかしてるんですけど、ふとしたときに気品を感じるんです。なんというか、そうですね……尊い存在のような」


まさかそんなことを言われると思わなかった。
品……か。

………品？Aに？あの、やることしか頭にない神代Aが？

まぁ、確かに名家の長女として生まれた訳だし、実際オレの幼なじみな訳だし。


「………どうしたんですか、苦い顔して」


「……いいや」





オレとAは似てるって。
Aに言ったらなんて言うだろう。え、とポカンとするだろうか。



それとも、




喜んでくれるだろうか。

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