黄金の雨は知っている

〜目を疑う光景〜 ページ3

彩side

土曜日の午後 ，私はまた秀明のグラウンドに行ってみた 1人で懸命に努力をしている若武を見たかったから


若武は，抜群の運動神経を持っていて

サッカーチームKZでは不動のとっぷ下と言われて
いた


トップ下と言うのは攻撃の要で，チームの中でも


目立つ存在 それを維持するのが若武の誇りだった


それなのにある日 ，突然 そのトップ下から外された


若武は怒ったり，迷ったり，色々と試行錯誤

していたけれど，やがて猛然と個人練習

するようになった

その噂を聞いて，私も行ってみたんだ


グラウンドの砂埃にまみれて，1人で、

ひたすら練習する若武を見て，胸が熱くなるような

気がした。


見ていると，自分も頑張ろうって気持ちになるから

それで時々，こっそりと若武の練習を見に行くように

なった……


その日，私がグラウンドに着いた時には


KZ全体の練習は終わっていて，正門前の道は


中から出てくるメンバーで込み合っていた


皆が練習着の上から緋色のウィンドブレーカー

を着ていて，あたり一面，真っ赤に見えるほどだった



『うわぁーあたり一面，真っ赤だね〜』


そう，後ろから声をかけられた


後ろを振り向くと 童話に出てくるお姫様の様な


美少女が笑顔で話していた


『アーヤごめん待った？』


そう言って申し訳なさそうな顔をしている彼女

武田Aちゃん 探偵チームKZの中でも

唯一無二の存在，の超美少女

英語が得意で【英の武田】って呼ばれてるの


Aちゃんとは今日は委員会で現地集合だったんだ



2人で仲良く話しながら自転車をこいで

東側にあるフェンスの出入り口で停め

そこから中に入った

ここからだと，用具置き場になっているいくつかの

物置の間を抜ければ、すぐ前がサッカーグラウンドだ

し，メンバーはほとんど出入りしないから

待ち伏せの女の子もいなくてちょうどいい


ってAちゃんが教えてくれた



小さい声でAちゃんと話していると


｢わぁ、ラッキー!!｣


はしゃいだ声が聞こえてきたのは私達が物置の

脇の通り道を抜けようとした時だった


見れば女の子が7、8人こっちにやってくる


私は慌てて，その場から動けないでいると


Aちゃんに引っ張られ物置の影に身を潜めた


多分 気持ちは一緒

グラウンドに行こうとしているところを見られて

いろいろ言われたくなかったんだ

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