第十話 ページ12
─────むいくんが好き。それは恋愛感情として。
『むいくーん』
名前を呼びながら大好きな人を探していれば、いつもの縁側でその姿を見つける。呼ばれていることに気づいた彼は、少し面倒臭そうに此方を見た。
「……アンタさ、僕と同い年でしょ」
あ、今日は“僕”だ。そう思いながら、私はむいくんの隣に腰掛ける。
「その呼び方…そろそろやめて欲しいんだけど」
『えっ!?何で!?』
「聞いてるコッチが恥ずかしい。呼び捨てで良いから」
呼び捨てって…無一郎!?
『いやいや無理無理!ずっとむいくんだったから慣れてるし』
「普段ズケズケ来る癖にこんな事で遠慮するの?」
『だ…だって…』
恋を自覚したばかりだから余計に恥ずかしい。…なんて言えるわけもない。
『むいくんって呼び方は私にとって特別だから』
「……分かったよ」
むいくんは暫く私を見つめた後、小さく息を吐く。…本当に分かってくれたのだろうか。
それから2人でぼんやりと景色を眺める。口数は多くないけど、こんなまったりとした雰囲気が私は好きだ。
「……あの時」
『うん?』
「…鬼に襲われた時、どんな状況だった」
…どうして突然、そんな事聞くんだろう。
「未だに何処から来たのか分からないから」
顔に出ていたのか、むいくんがそう答えた。
『……走ってたら、鬼に会った』
私の返答に呆れた顔をするむいくん。一応、嘘はついていない。トリップしたなんて流石に言えないけど、人を求めて走ってたら鬼に会ったのだ。
『あ…そう言えば…。関係ない事だけど、あの時の鬼が変な事言ってたの』
「…変な事?」
『うん。妙な匂いとか他の人間と違うとか…』
私の言葉にむいくんが顔色を変える。
『むいくん…?』
「…ちょっと用事思い出したから出てくる」
声を掛ける隙もなく、むいくんは屋敷を出て行った。何かおかしな事を言ってしまったのだろうか。思い至る節がないからこそ、不安が心の中を占めていく。
空を見上げれば、黒い雲が覆っていて激しい雨が降りそうだった。
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時