第２話 見えない少年 ページ4
やがて円堂が目を覚ますと、ボールはフィールドを転がり、剛陣と近くにいた数名の仲間は驚くように目を瞬かせていた。
「す、凄いです円堂さん！！今度の必殺技は蹴りにしたんですか！？」
「おぉ！！すげぇ！思わず炭酸ぶちまけ損ねたぜ！」
円堂の周りに剛陣と坂野上寄ってくる。同様に風丸もやや心配そうな顔で円堂の元へと走ってきた。
「円堂。どうしたんだ、お前がボールを蹴って止めるなんて」
「俺が……蹴って…………？」
「……大丈夫か？」
円堂自身その記憶があまりない。
頭を振ってもその部分は靄がかかったようにはっきりとしなかった。ぼんやりとする頭の中であの、自分が自分ではないような感覚を思い出した。
(あの感じ、前にもどこかで……)
「調子が悪いなら休めよ？」
「え……あ、嗚呼」
気の抜けた返事を返すと風丸たちはそれぞれの練習へと戻っていった。円堂も続けてボールを蹴ろうとしている剛陣に声をかけ構えた。だが、またあの黄緑の瞳が主張するかのように光り、円堂の視線を奪った。
「円堂さん、大丈夫すか」
肩を叩かれ、声のした方に円堂が視線を移すと剛陣が心配そうに円堂を見ていた。円堂が二度もボールを逃すというのはチーム内では珍しく、次第にその状況は練習中の仲間たちに知れ渡った。
皆、それぞれ心配やら興味やら様々な感情の元円堂に視線を移した。
「あ、いや。体調が悪いとかじゃないんだ。
……なぁ、彼奴この近くに住んでたりするのかな」
冷や汗をぬぐいながら円堂がとある場所を指差した。
フィールドを外れた白線の外の、誰もいない場所。指の先を見た剛陣は、不思議そうに首を傾げた。
「誰もいないじゃないっすか」
誰もいないわけはなかった。
確かに円堂には少年の姿が見えていた。
眉をひそめた風丸にも円堂が問いかけると同様の返事だった。
「円堂、お前なんか変だぞ」
「いや、でもそこにいるんだよ。おーいお前！こっちに来てくれー！」
円堂が声を上げると少年は顔を円堂の方へと向けた。右目の隠れた髪が揺れる。黄緑の瞳が瞬かれる。円堂の目はしっかり少年の目を見ていた。
少年は其れがわかったのか慌てながら辺りを見渡すと、やがてとある物の方に近づいた。
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作者名：匿名の人。 | 作成日時：2019年12月6日 19時
