66:ノリとリズム ページ18
「そうかい。伊東は死に、真選組が生き残ったか……存外、まだまだ幕府も丈夫じゃねーか」
屋形船の一室。
三味線の音に高杉晋助の低い音が乗った
「いや、伊東が脆かったのか？それとも、万斉、お前が弱かったのか」
嘲るように口許に笑みを浮かべた高杉は、その鋭い眼光を持つ隻眼で、三味線を弾く男を見た
「元々今回の仕事は真選組の目を幕府中央から引き離すのが目的。春雨が無事密航し中央とのみつやくが成ったとなれば戦闘の必要もなし。牽制の意は果たしたでござる」
「俺ァ真選組を潰すつもりでいけと言ったはずだぜ」
「何事にも重要なのはノリとリズムでござる。これを欠けば何事も上手く行かぬ。ノレぬとあらば即座に引くが拙者のやり方」
不規則に奏でられていた音が止み、河上が腰を上げる
「万斉」
高杉の声に、河上は背を向けたまま黙した
「俺の歌にはノれねーか」
「……白夜叉が、俺の護るものは昔から何一つ変わらん…と。
晋助…何かわかるか」
黙ったままの高杉に、河上は背を向けたまま、何処か清々しさを感じる笑みを口許に浮かべた
「ヤツらの歌に聞き惚れた。最後まで聞いてみたくなったでござるよ」
拙者の負けでござる。
そう締め括った河上に、高杉は鼻を鳴らした
「ああ、そう言えば。お主が執心しておる大祝Aという女性」
A。
その名を聞いて、高杉は三味線に伸ばしていた手を止めた
「音が変わったでござる。
正直、最初は効くに耐えぬほど在り来たりな雅楽であったが、伊東が死んでからは変わった。芯のある雅な琴の音でござる」
「芯ねェ……あいつァ"向こう"に帰しちまうには惜しい女だ」
言いながら、高杉は丸く明るい月を見上げ、口の端を持ち上げた。
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みぃ(プロフ) - コメント失礼します！こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (
レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
虎(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます！私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな？と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます！！伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
虎 - 面白いです！私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：東雲出雲 | 作成日時：2019年2月13日 0時
