88:嘘(H) ページ40
「大祝」
少し乱れた着物に返り血を浴びた大祝が、バツの悪そうな顔をして振り返った
「副長。すみません、勝手に」
ものの数十分でテロリストを鎮圧した大祝は、まさに凄まじいとしか言いようがなかった。
近付くのを躊躇うほどに"圧"を持った大祝の剣技は、見とれてしまうほどに鮮やかで。
無駄な動きの一切無い洗練された"人を殺す剣"は、ここまで来れば恐ろしさすら感じない。
それどころか、殺されるならこの剣に───そんな馬鹿げた考えまで首をもたげる始末だ
「ああ。始末書覚悟しとけよ、暫く睡眠時間はないと思え。
……で、誤解は解けたのか」
「ええ、どうやら無事に。ありがとうございました、副長」
「……おう」
にこりと微笑んだ大祝の瞳が俺を写した。
途端に、指先に大祝の柔らかい頬の感触が蘇る
『ね、十四郎さん?』
ぎこちなくも吐き出された俺の名前は、なにも知らない俺の鼓動を早めるのには充分だった。
「───副長?大丈夫ですか?」
ハッとして顔を上げると至近距離の大祝の顔。
「っうおォォ!?何だ!」
「な、何だって……顔が真っ赤ですよ。大丈夫ですか?」
「あああああ大丈夫だ!!近づくな!!」
「え!?私何かしましたか!?」
グイッと大祝を引き離すと、傷付いたような顔をして俺の腕をつかむ
「してねェ!」
「じゃあ何でそんなこと言うんですか!」
「それは!!……」
真剣に俺を見つめる藍色に、言葉が詰まる。
何でも見透かしちまいそうな目ェしてる癖に何でわからねェ。
「……男と女が、あまり近づくのも、よくねェ、だろ」
あまりに的外れな答えに、大祝はポカンと目を丸くしたあと、小さく「そうですね」と返し、そっと俺から離れた
「これからは、気を付けますね」
控え目に微笑んだ大祝に、ズキリと胸の辺りが痛みを訴えた
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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
虎(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
虎 - 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時