検索窓
今日:33 hit、昨日:11 hit、合計:266,475 hit

ページ42







死にたくない、とポロポロと涙を零しながらも笑って弱々しく手を握る先生




それでも時間というものはあまりにも無慈悲なもので


先生の体力や意識を徐々に奪っていく





「…A……」



『何ですか?』





横になりながら涙も拭かずに私の名前呼んだ


するともう片方の空いていた手がゆっくりとこちらに伸びてきて、頬を指の腹で撫でてくる





「お前に、会えなくなるのが….嫌だ……」



『…景山に、宜しく言っておいて下さいよ』



「やっぱり、怖い…なぁ……」





と言いつつも、手の力がするりと抜けて、瞼が今にも閉じそうだ





きっとそれは、先生も分かっていて


だからこそ、こんなにも泣いている






そんな先生の肩を優しく押して、横向きから仰向けにしてやる



こんな簡単に押せるなんて、学校に居た頃は思いもしなかった

力なんて、殆ど使っていない






布団を掛け直して、お腹辺りを優しく一定のリズムで叩く





確か、寝かせるにはこうするんだっけ


した事も、された事もないから分からないけど…





「…なぁ、A…」



『はい』





呟くように出た私の名前に返事をして、濡れた顔を拭いてやる





「生きて、よ…」





2度目のその言葉に、思わず手が止まった



でも言われた言葉の意味を理解するのに割と時間はかからなかった




“生きろ” と強く言わないのは、きっと彼の優しさだろうか




そんな彼の言葉に、曖昧に笑って誤魔化すだけだった


それを分かって先生も、その件についてそれ以上は何も聞かなかった





「…お前に…ちゃんと、届いたか…?」



『…何がですか?』



「俺の、想い…全部……」



『…あれが俗に言う愛と言うものなら。
私が願ったものとは違うけど…確かに、頂きました』



「そっ、か…良かった……」





それで少しの沈黙が生まれて


音の間隔が遅くなる機械音が耳に入ってくる





「…寝たくない、のになぁ……眠い…」



『みたいですね』



「…腹、括る、か、ぁ……」





そう言って先生は、緊張を解くみたいに一度だけ大きく深く呼吸をした


そして目だけを動かしてこちらを見れば、小さく微笑む





「…ぉ、やす、み……」



『…はい、おやすみなさい』





_ピーー…




瞼を閉じたら、握っていた手の力が抜けた







あぁ、綺麗



綺麗に、消えた





『…お疲れ様でした。

ゆっくり、休んで下さい』





削れたものが全て



消えた








素直→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (438 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
595人がお気に入り
設定タグ:3年A組 , 柊一颯 , 菅田将暉
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

おひな(プロフ) - 感動しました。ありがとうございました。 (1月9日 23時) (レス) @page44 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
玲生(プロフ) - 私こんな綺麗に泣いたことないかもってぐらいすーって涙ながれた (8月14日 22時) (レス) @page44 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
ケロッピ(プロフ) - ありがとうございました (8月6日 1時) (レス) id: fb652d6333 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 柊先生の生存ルートも書いてほしいです (2021年3月19日 16時) (レス) id: b4ba18a803 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - え、え?最終更新日が…?また更新されるのですか?期待しても良いのでしょうか?笑 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 76abfc2842 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もちもち | 作成日時:2019年5月14日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。