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・〜柊side〜 ページ33







ベッドの上に腰を掛け、脇の下に腕を通して抱き締める







強張って固まる体



籠もった熱



少しばかり落ち着かない呼吸





「誰も、お前の事を怒らない。

怖がらなくても良いんだ」





抱き締めたまま背中をポンポンとゆっくりと叩く



何度も抱き締めた事があるけど、それが返される事は今までに1回も無い





『でも…』





落ち着かせようとして暫くすると、蚊が鳴くような細い声が耳元で聞こえた





『でも、ね…言うことは、聞かなきゃ…

何も、出来ないんだから…』



「そんな事…」



『ただ笑って欲しいだけなの…


もっと、勉強が出来れば良い?

もっと、運動が出来れば良い?

料理が上手くなれば、良いかな…』





もはや幼児化と言っても過言ではなかった




自分をすり減らして、もっと…って





…こいつが、こいつの両親から抜け出せてないのは明らかだった


まるでそれは呪縛のよう






Aの担当医が言っていた


人格形成が行われる幼少期に、こいつのような…





集団における一番近しい人物である親に暴行や育児放棄をされると、損なうものが大きいそうだ



それらが重なれば重なる程、影響も悪い方に大きくなり



ふとした瞬間に思い出してパニックになる者もいれば、

大人になって、じわじわ蝕まれる者もいる



ちゃんとメンタルケアをしない限り、治る事はなく





ずっと、過去に囚われ続ける…








…俺は恵まれた事に、親から沢山愛情を受けて育って来た



だから、こいつが苦しめられている根本的なものは分かっていても


共感する事は出来ない





ただただ、必死に何が最適かを導き出して、俺なりにそれを提示する他なかった





『もっと、ちゃんとしてなきゃ…2人が、怒らなくても済むように…

何も出来ないんだから、出来るように、ちゃんと…』



「…ちゃんとなんて、しなくて良い」



『え…?』





でも、考えてる時間すら惜しくて


気付けば、思った事を口にしていた




しっかりと腕に力を込めて、気持ちが伝わるように






…消えない、ように





「もう、そんなの忘れて良い。苦しまなくて良い。

お前の言う2人は…


もう、居ないんだよ」



『ぁ…』





だから、苦しまないで。辛い思いをしないで。


そんな意味も込めて、グッと後頭部を引き寄せて頭を撫でる





『私が、殺したんだった…』





が、Aの思い出したように漏れた声が


耳の直ぐ近くで反芻した







・〜柊side〜→←・〜柊side〜



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おひな(プロフ) - 感動しました。ありがとうございました。 (1月9日 23時) (レス) @page44 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
玲生(プロフ) - 私こんな綺麗に泣いたことないかもってぐらいすーって涙ながれた (8月14日 22時) (レス) @page44 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
ケロッピ(プロフ) - ありがとうございました (8月6日 1時) (レス) id: fb652d6333 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 柊先生の生存ルートも書いてほしいです (2021年3月19日 16時) (レス) id: b4ba18a803 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - え、え?最終更新日が…?また更新されるのですか?期待しても良いのでしょうか?笑 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 76abfc2842 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2019年5月14日 23時

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