【3年A組】杭は出なきゃ打たれないはず 5【今から皆さんは人質です】

・〜柊side〜 ページ29

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結局その日は、その後もAの様子が和らぐまで、まったりと話をしていて


夜を迎えてしまったから、俺のわがままでAと一緒に寝た



…Aが寝たのを確認してから寝ようと思ってたんだが、俺が先に寝てしまったが。


だから、ちゃんとAが寝たのかは分からない




そしてその日は、もうアンケートを書いている姿は見なかった




何をどう書いたのか、

そもそも、ちゃんと書いたのか…見てないから知らない






その日から数日経ったわけだが、その間に





「ご飯の時間でーす」



『あ、ありがとうございます』





病室に、Aが移って来た


今までなら互いに個室だったんだが、俺から郡司さんやAの担当医と相談して、一緒の部屋にしてもらった


その結果、今みたいに看護師さんが1人来て病院食を持って来てくれたり、軽い健康診査をしたり


時には、どちらかの担当医が来たりする






1人で居るには広かったから、丁度良い





「腹減ってなくても、ちゃんと食べろよ？」



『…はい』





それに、こいつの生活リズムを半ば強制的に直すきっかけになる




言えば、こいつはちゃんとする


それは学校の頃に分かった事だ






だからAは口に物を運んではいるのだが



口に入れては、それを嫌うように飲み物で流し込んで、口に入れて…の繰り返し





ただ胃に物を入れるだけの作業のようだった





そして極僅かに、渋々口にしているようにも見える








まるで真似事か何かだ






そしてそれらが終われば



小さく息を吐く







お腹一杯だとか、美味しさのあまりに出るような息ではなく


何処か億劫そうに



何か疲れた時に吐くようなものに似ていた









…せめて、食べる事を嫌わないようにして欲しい



食べる事が日常化して欲しい









それが、俺や郡司さんや医師の願い





食べる事は、生きる事だから








本音をいうなれば




生きる事を、諦めないで欲しい








それと同時に、この間のAを見てしまったから


Aの気持ちも尊重したいとも思う





『あの…私の顔に、何か付いてますか？』



「いや、何も。

ただ、絵に描きたくなるような顔をしてるな」



『何ですか、それ…』





複雑だ



複雑且つ、厄介な問題







俺はただ、このフニャっと緩められた綺麗な笑顔を見てたいだけなんだけどなぁ…



それを保つのは、どうも難しい







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