三社鼎立 11 ページ32
「そんな、最初から僕が…?ぼ……僕は何も…。ただ……守ろうとして僕は……」
敦くんは頭を抱え、ぶつぶつと一人言をいう。次第に声が大きくなり、周りのものを破壊し始めた。
「やめろ!やめろぉぉぉおおォォッ!!」
駅の壁が崩壊し、散乱する。視界の端で、太宰さんが男の子が持っていた人形を見つけたのが見えた。
「消えろ」
人形は微粒子となって消える。丁度目の前にいた敦くんの腕の痕も消えた。私は体を起こし、いまだに頭を抱える敦くんに手を伸ばす。しかし、ぱしっと強い衝撃が手に走った。
「…ぁ、ごめっ…………」
「………大丈夫だよ。ごめんね、いきなり」
自分の行動にはっと気がついた敦くんが私の顔をみた。ずきり、と胸が痛む。何故だろう、払われた手よりもずきずきと胸が痛い。
彼を安心させるために笑ったが、どこかぎこちのないものになってしまった。
そんな私たちをよそに、太宰さんは男の子と会話し始めた。
「太宰さんの新しいお友達、ずいぶん壊れやすいんだね。けどいいんだ、太宰さんを壊す楽しみが待ってるもの!」
「それはおめでとう」
「僕を閉じ込めたお礼にいっぱい苦しめて壊してあげるね!」
「善く覚えているよ。君ひとり封印する為に大勢死んだ。けど次は封印などしない」
楽しそうに笑う男の子とは対照的に、太宰さんは今までの声とは異なり、さらに低い声で男の子に言った。
「心臓を刳り貫く」
「ふふふ。また遊ぼうね、太宰さん☆僕、聞いたんだ。そこのお姉さんは太宰さんの大切な人なんでしょ?だから次はそこのお姉さんがいいなあ」
「次なんてこない。絶対に」
そこのお姉さん、と言いながら再び列車に乗った男の子が私をみた。私はこの目を知っている。憎悪だ。その瞳は憎悪でどろどろに渦巻いており、吸い込まれそうだった。太宰さんは私の前に立ち、男の子を睨むが、男の子は笑い声と共に列車は行ってしまった。
「……太宰さん」
「大丈夫だ、A。大丈夫」
太宰さんは私の手を引いて立ち上がらせると、大丈夫という言葉を繰り返しながら私の頭を撫でる。その心地よいリズムにいくらか落ち着くと、今度は敦くんを見た。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時