三社鼎立 10 ページ31
「…敦くんっ!?」
敦くんは私に爪を立てようとするところを、必死にかわす。男の子は「おねえさん、なんとかしなきゃ殺されちゃうよ」と、私たちをみて愉快そうに笑っていた。恐らく、これが彼の異能力なのだろう。
ナオミちゃんは暴走する敦くんをみて、必死の形相で敦くんに呼び掛けた。
「敦さん、やめて……!!」
「ぼく、が……!!僕が…!!」
「やめて敦くん!!」
今度は狙いをナオミちゃんたちに変えたようで、敦くんは急遽方向転換した。静止を呼び掛けるも、彼は聞く耳をもたず、彼女たちの元へ向かう。鋭利な爪がナオミちゃんたちに迫ろうとしたそのとき、私は異能力を発動し、間一髪で間に入ることができた。
「僕が、僕が…Aちゃんを守らなきゃ……!!僕がAちゃんを助けなきゃ……!!」
「っ…え……!?」
いつものように反撃をしたが、なぜか通用せず、敦くんの爪はそのまま私の腕に傷をつけた。ぽたりと血が垂れる。それをみたナオミちゃんと春野さんの悲鳴があがった。
まるで獲物を狩る虎の目だ。敦くんは私を押し倒し、馬乗りになると私の頚を締めた。
ギラギラとした敦くんの獣のような目が私を射ぬく。段々意識が薄れてきて、生理的な涙が頬に伝った。
怖い。敦くんが、怖い。
初めて彼からの殺気にそう思った。
「太宰さんよりも、僕が……!!」
敦くんは、頚を絞められている私よりも、悲痛な表情で。
「……泣か、ない……で、あつし、くん……」
無意識に私は彼の頬に手を伸ばし、目からでている血をすくう。すると一瞬ぴたりと敦くんの動きが止まった。
「敦くん……?」
「……ちが、う……」
しかし、再び動き出すと、片腕をあげ、私の頚めがけて爪を勢いよくふりおろす。
「見ろ!此れが僕だ!」
こんな時、いつも思い出すのはあの人だ。
「僕の力だッ!!」
―――嗚呼、太宰さん、
「止めるんだ、敦君!良く見ろ!!」
その声がようやく届いたのか、敦くんは再びぴたりと止まった。緩んだ腕から解放され、だらりと私の体が地面に倒れ、咳き込む。敦くんは意識が戻ったのか、恐る恐る私をみた。そんな彼の黄色がかった紫色の瞳が揺れるのをぼうっとみていた。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時