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真緒と目をあわせようとせず、つらつらと述べていく美羽。
そんな彼女に、真緒は苦笑いを浮かべる。
「あはは。心配してくれてるんですね、ありがとうございます」
「お礼なんて別にいいのよ、私がしたくてしてることだもの」
美羽から返された言葉に笑みを浮かべ、そしてすこし思い詰めた表情をする。
「......俺、夢を、希望を明日まで回せるのは、自信があるやつだけだ、って思ってるんです。
今日のうちに、できることをやっちゃわないと、俺みたいな小心者は不安になるですよ。
すみません、突然なに言い出すんだって感じですよね」
へらりと、取り繕(つくろ)った笑顔を美羽に向ける。
美羽は、平気、と、続けて、と言うふうに静かに首を横に振った。
恐らく彼は、先に帰宅してしまったスバルと北斗のことをいっているのだろう。
「全人類に平等に与えられているはずの、24時間の使いかたが下手なんです。凡人はつらいですね〜、とくに近くに天才がいると」
真緒が気楽に語っている。
「まぁ俺は、なにかと帳尻(ちょうじり)あわせることだけは得意だから......。どうにでも、なるけど。
問題は真なんですよね、あいつ思い詰めすぎるところあるから」
「...そう」
真緒はいつも自分を後回しにして、ひとの心配ばかりしている。
そういえば真は、どこに行ってしまったのだろう。
帰るとも言っていなかったけれど、姿が見えない。
「俺たち『Trickstar』が『S1』で披露する曲目は固まった。全6曲、そのうち各1曲ずつそれぞれがメインを張ることに決定してる」
頭が仕事モードになったのか、真緒はアイドルとしての打合せ、みたいな話題を始めている。
「まだ技術の足りない真は、俺たち『Trickstar』の持ち歌を担当する。おまけに失敗しても最後の曲____
全員に見せ場がある新曲で、挽回(ばんかい)できるはずだ」
真自身も了承し、4人で構成し、美羽に見せた『S1』での曲順。
美羽から多少訂正されたものの、これでいこう、と決定したものだ。
「そうね。......あなたは理解できていると思うけれど、決して彼を甘やかしているわけではないわ」
「もちろん、それはわかってます。真に気を遣ってるって感じですね。真もそれは諒解(りょうかい)してる、自分の実力不足も知ってる」
すでに出場の手続きはしてしまった、もう逃げられない。
誰も。
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時