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「ていうかさ。どうして美羽ちゃんを2年生の『ひよっこ』どもにあげちゃったわけ？ せっかくフリーになってたのに。
ちゃんと確保しといてよ〜、やる気がダダ下がりなんだけど。
俺、『UNDED』を脱退してそっちの『ユニット』に所属しちゃおっかな〜？」
「それは困る。おぬしの戦力は、『UNDED』に必要じゃ」
けれど零も泰然自若(たいぜんじじゃく)として、薫が放つ独特の妖気(ようき)を受け流していた。
近づいてきた薫の頭を撫でようとして、避けられて、寂しそうにしている。
「1週間後の『S1』には、外部からも大勢の客がくる。つまり、たくさんの一般人の女の子もくるわけじゃ。その子らをおぬしのファンにするため____
みたいな方向で、やる気をだしてくれんかのう〜？」
「う〜ん。そっちはそっちで魅力的だけどね、朔間さんにはかなわないな〜？」
柔和に微笑んでいるのに、なぜか怒り狂っているようにも見える。
独特な二面性のある気配を漂わせながら、すんなり薫は零の横を素通りした。
「まぁいいや。美羽ちゃんとおしゃべりする機会はこれから先、いくらでもあるし。今日のところは、勘弁してあげようかな〜？」
そのまま振り向きもせず、修羅場(しゅらば)じみた雰囲気のガーデンテラスから去っていく。
「けど練習はパスね、これからデートの約束があるから。ばいば〜い♪」
先ほど、美羽をデートに誘っていた気がするのだが。
断られるとわかっていて、聞いたのだろうか。
それはともかく、薫は、あっという間に遠ざかっていく。
「......逃げよった。まったく、名前のごとく薫風(くんぷう)のごとき男じゃのう？」
その後ろ姿を見送って、零は項垂(うなだ)れた。
「う〜む。薫くんの練習嫌いは深刻じゃのう、やればできる子なのじゃが」
いつも余裕ありげな零にしては珍しく、羽風薫という存在をどう扱っていいかわからないらしい。
自由な風に翻弄(ほんろう)されて、困り果てているみたいだった。
「......まぁ、そのときそのときで、なにかでつれてくれたら、こちらとしてはありがたいのだけれど。
薫くんに関しては、そう簡単にはいかないものね」
「うむ......。女の子、といえば、すこしはやる気をだしてくれるんじゃがのう」
「いつまでも、その手が使えるとは限らない、ということね」
ふたりをこんなにも悩ませる薫に、思わず溜め息をこぼす。
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年8月9日 18時
