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「真緒くん」
悶々(もんもん)と、みんなのいちばん後ろを歩きながら考えていた彼に、突如Aが話しかけた。
「苦しかったら......辛かったら、言ってね」
唐突なその言葉に真緒は目を見開き、声もでなかった。
「......後悔しない道を選んで、歩きなさい。どの道か、がわからなくなったら、深く考えずに、自分のいきたい道へ。
自分の気持ちに正直になって、選ぶといい。
きっと......後悔しないから」
それだけ言って、再び、彼女は背を向けてしまった。
彼女は、気づいていたのだろうか。
真緒の悩みに、苦しみに。
それとも......
【誰か】と重ねていたのだろうか。
過去の、【誰か】と。
今の、【誰か】と。
後者、なのではないだろうか。
でなければきっと、あのような顔は、しないはずだ。
真緒が一瞬、ほんの一瞬だけ見えた、彼女の顔は。
いつも無表情な彼女の表情は、
【苦痛】と【後悔】で
まみれていた____。
声をかけることはかなわなかった真緒だが、先ほどの言葉で何を感じたのか。
それは本人にしかわからないが、なにかを決心した表情で、
おおきく
力強く
すこし距離が空いてしまった仲間の背中へと、一歩を踏みだしたのだ____。
いまはまだ、彼は悩んで、迷って、自分の立場に苦しむのだろう。
でも、例え苦しくても、悲しくても、
それが彼の不幸で、けれど彼が選んだ道だった。
遅れてきた希望の星が、我々の未来にどんな影響を及ぼすのか____この時点では、神のみぞ知る。
複雑怪奇な運命のなか、彼らは、前へ進んでいくしかない。
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
