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互いに寄り添って、手を繋(つな)ぎあって、地獄めいた学院のなかで夢を追いかけていた。
それなのに。
その芽生えたばかりの尊いものは、花咲くこともなく踏(ふ)みにじられた。
「観客は、俺と朝霧先輩しかいなかった。でも俺たちのために、『Ra*blts』のみんなは全力でパフォーマンスをしてくれたよ」
そうなのだ。
彼らは、かわいいだけの集団ではない。
意志があり、お客様を楽しませようという愛情があって、だからこそ残酷だった。
Aは、出ていった者に何も言わなかったが、鋭(するど)い眼光(がんこう)で見つめていた。
『Ra*bits』のパフォーマンスのときも、始終(ししゅう)表情が険(けわ)しかった。
彼らは、Aとスバル、たった2人のために全力を尽くしてくれたのだ。
がらんどうの『講堂』で、声を、熱意を振り絞って。
「すごかったよ、曲も歌も何もかも。しののんたちの努力が、目に見えるようだった。魂が、震えたよ。感動的な、パフォーマンスだったのに」
スバルは初めて親にぶたれた子供みたいに、呆然としている。
その表情に一瞬だけ笑みが浮かびかける____『Ra*bits』よみんなのパフォーマンスを、思い出したのだろう。
彼も、(おそらく)Aも、感動していた。
素晴らしかった。
彼らは、きちんも最後までやり遂げたのだ。
初心者だらけ、なんて信じられないぐらい____楽しかった。
些細(ささい)な失敗もありつつも、それも愛嬌(あいきょう)にして、全力でアイドルとして尽くしてくれた。
彼らは、何度も何度も、スバルとA____2人の観客に向けて笑顔を送った。
夢心地になるような、愛らしい歌声を聞かせてくれた。
同情とかではなく、心の底から____賞賛(しょうさん)したい、ライブだった。
「でもそれを見ていたのは、俺と朝霧先輩だけだった」
けれど、現実は重くのしかかっていた。
彼らの周りには闇が渦巻(うずま)いていて、どれだけ『Ra*bits』のみんなが声を張りあげても、おぞましい悪意は振り払えなかった。
「こんなの、まちがってる。しののんが可哀想(かわいそう)だ、あの子の歌声はほんとに綺麗なんだよ。聞けばみんな虜(とりこ)になる、俺がそうだったみたいに」
しののんのファン第一号、とスバルは名乗っていた。
スバルは、創のことが大好きなのだ。
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
