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「公式ドリフェスを観にくる客は、圧倒的強者たる生徒会に投票する。それだけが、目的だ。
成績UPのために、必要なのはそれだけだからな」
スバルは、全力でみんなを引き留めようとした。
笑顔で呼びかけて、最後は必死になって頼みこんで。
けれど、意味はなかった。
むしろ、彼は常識知らずみたいに罵(ののし)られた。
まちがっているのは彼のほうで、無慈悲(むじひ)に立ち去る彼らのほうが正義であった。
「だから、生徒会の演目が終われば帰ってしまう。実際、生徒会以外の演目を見る必要はない。
どうせ誰も生徒会には勝てない、見るだけ時間の無駄だ」
それがこの学院の常識____日常的な光景なのだと知って、慄然(りつぜん)とした。
「そんな空気が、蔓延(まんえん)している。当然の帰結だ。観客に、最後まで付きあう義理はないんだ。
むしろ生徒会以外を応援したり、演目を見ると、村八分(ふらはちぶ)にされかねない」
奇妙な因習(いんしゅう)に支配された、夢ノ咲学院。
スバルは、まだ他人事(ひとごと)だった。
すでに、彼も夢ノ咲学院の制服を着ているというのに。
かわいい子たちが目の前で無残(むざん)に引き裂(さ)かれるまで、愚(おろ)かしくも、呑気(のんき)にお客さん気分でいたのだ。
「そんな現状を嫌った連中の足掻(あが)きとして、非公式ドリフェスが勃興(ぼっこう)しているわけだが。
そちらでは、上位がどうか、人気かどうかは関係なく......。同時に演目を行ったり、公平に勝負ができるような配慮がある」
非公式戦____たとえば、【龍王戦】だ。
たしかに、あちらには公式のドリフェスにはない前向きなエネルギーがあった。
どちらにも出場していた紅郎も、先日の【龍王戦】のほうが活(い)き活(い)きとしていたように思えた。
「だが公式ドリフェスは、『生徒会に投票するだけ』の催(もよお)しになっている。形骸化(けいがいか)している、もはや勝負にすらなっていない」
予定調和の、儀式みたいに。
公式ドリフェスは、始まる前から結果がわかっている。
だから誰も、そんなものに一喜一憂しない。
奇跡は、大逆転は、ない。
退屈な、ルーチンワークになっている____。
それが当たり前になって、みんな受け入れている。
「観客が帰ってしまうため、後から演目を行う『ユニット』は票が得られない」
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
